さて、今回は現在の作業の進捗状況を報告します。
まず『路上の人』『聖者の行進』『時代と人間』の3冊ですが、3冊とも作業は順調に進んでおり、もう少しすれば価格も発売日も確定できるところまできました。
作業的に一番進んでいるのが『聖者の行進』で、既に作家・橋本治氏の解説(「行進する巨大なもの」というタイトルです。おもしろそうでしょう? これが、橋本氏らしい読解を展開していて、実におもしろいんです)も含めて2度目の校正も終わり、もう一回ゲラを出して、誤字や内容の確認をすれば、本文は完成ということになります。
続いて『時代と人間』ですが、こちらは先日、作家・高橋源一郎氏による解説が到着しました。「堀田さん、どう考えたらいいんでしょうね」と題された解説は、「堀田善衞という名前の作家がいて、その人は、何十年もたくさんの小説や評論を書いて、一九九八年に八〇歳でなくなった。さしあたっては、それだけわかっていれば、いいんじゃないだろうか。他の知識なんかどうでもいい。」という書き出しから始まっていました。堀田善衞という作家を何もしらない人にも、堀田氏のどこがすごかったのかを、わかりやすく解説してくださる内容になっていました。平易な言葉づかいでありながら、思考の深いところへと降りていく、高橋さんらしい解説だと思いました。
なお『時代と人間』ではカラーページにゴヤの図版を多数収録しているのですが、これもニューヨークからあと1枚ポジが届けば、それで全部そろいますので、峠は越えつつあるというところでしょうか。
そして『路上の人』。こちらも本文は、『聖者の行進』と同様に、ほぼ完成に近づいています。今は解説をお願いしている作家・評論家の加藤周一氏の原稿を待っているところです。加藤さんと何度かお電話でお話をしているのですが「堀田については以前からちゃんと書きたいと思っていた」と、非常に思いを込めて書いてくださるお約束をしてくださりました。その完成を非常に楽しみにして待っているところです。
一方、DVD-BOX(VIDEO-BOX)のほうの作業は年内が佳境です。
既にこのサイトにもアップされていますが、まず宮崎駿監督のイラストを使ったジャケットのデザインが完成しています。今は、パッケージ裏面に掲載される解説部分などをデザインしているところです。なおDVDとCDを収納するボックスの背中の部分には、このサイトのトップに置かれている宮崎監督のイラストコメントがあしらわれているデザインです。
また映像の中身のほうですが、こちらは、現在、字幕の作業中です。今回のボックスではDVDに限り、日本語字幕を見られる仕様になっているのです。この字幕は当然ながら本来は聴覚が不自由な方のためのものなのですが、実は意外な効用があるのです。
「NHK人間大学 時代と人間」にしても、そのほかの対談などにしてもそうですが、基本的に話し言葉で番組は進んでいきます。話し言葉は、耳になじんでするすると聞いてしまうのですが、時に、そこで何が言われていたかがうまく把握できないこともあります。
そこで字幕の登場です。
字幕というのはスペースの関係上、話し言葉を全部文字に起こしているわけではありません。ある程度、話題のエッセンスを汲み取り、言葉の重複などを省いてまとめているものです。ですから、堀田氏の講義や対談を聞くときに、字幕も一緒に表示しながら見ていると、内容が非常によく頭に入ってくるのです。固有名詞なども、耳で聞くより、ずっとすばやく理解することができます。字幕を表示しながらソフトを見るというこの裏技≠ヘ、発売されたおりには、ぜひ試していただきたいことのひとつです。
こうして字幕を含め完成したDVDの内容を、年内中にチェックする予定ですが、果たして6枚(本)分の映像がすべて年内にチェック可能になるかどうか……現在、非常に微妙な状況ですが、きっとなんとかなるでしょう。
というわけで、発売2カ月前の状況をお知らせいたしました。
「時代と人間」通信目次
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