このサイトはスタジオジブリが、作家である故・堀田善衞氏の作品やTV番組を復刊・リリースするにあたって、より多くの人に堀田氏のことを知ってもらおうと開設したサイトです。
まず「どうしてスタジオジブリが堀田氏の作品を取り扱うのだろう?」と疑問に思った方は、「スタジオジブリと堀田善衞」のページを見てみてください。
さて「時代と人間」通信の第1回目は、改めてこのサイトの主役である堀田氏のことをご紹介したいと思います。
堀田善衞氏は1918年(大正7年)生まれ。『広場の孤独』で1951年(昭和26年)の芥川賞を受賞した「戦後派」と呼ばれる作家の一人で、1998年(平成10年)に、80歳で亡くなられました。
……こう書くと堀田氏を過去の人、文学史上の人物のように思われる方もいるかもしれません。ですが、そういう先入観は「誤解」です。
作品を読むと分かるのですが、堀田氏の作品、特に1970年代後半から1990年代にかけて執筆された小説は、極めて現代的な要素に富んでおり、むしろ現在の視点から読んだほうがよりよく理解出来るのではないか――という作品が多数あります。
堀田氏の作品は、社会の変動期――つまり乱世――を題材に取り、その時代の中に生きた「観察者」たちを主人公に据えています。ゴヤ(『ゴヤ』全四巻)や鴨長明(『方丈記私記』)、モンテーニュ−(『ミシェル 城館の人』全三巻)などはその代表的な存在で、いずれも観察者であり、その時代をルポする広い意味でのジャーナリストです。読者は、これら観察者の目を通じて当時の様子に触れるうちに、自分の生きている現在もまた「乱世」であるということに気付かされます。この過去を語りながら現在を照らし出す視線を持っているところこそ、堀田作品の優れて現代的な側面だと思います。
あと忘れていけませんが、堀田氏の作品には冷静な観察力に基づいたユーモラスな部分もあり、そこも魅力の一つです。このユーモラスさは、ご本人の語り口を通じると、一層魅力的になります。
今回のDVD企画にあたって、番組の内容チェックをしてくださったNHKソフトウェアの方が「堀田氏の語っている姿が、なんともいえず、魅力的ですね」とニコニコしながらおっしゃっていました。これもまた堀田氏の持っている柔らかな雰囲気、ユーモアを指してのことです。そういう意味では、語っている内容だけでなく、その姿からニュアンスを感じられるという意味でも、ビデオグラムはなかなか興味深い内容になっていると思います。
このコーナーでは次回以降も、こうしたこぼれ話や制作の進行状況などをお伝えしていきます。
「時代と人間」通信目次
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