堀田氏と柄澤氏の関係を印象づけたのは、筑摩書房から出版された『聖者の行進』と『堀田善衞全集』(全16巻)でしょう。
『聖者の行進』で、柄澤氏は装丁と装画を担当。各短編の冒頭には、その作品をずばり象徴するような版画が飾られています。たとえば、京都の大火が登場する「酔漢」では、細い線で描かれた煙が画面をうねり、扇絵の画面の大半をうめつくしています。一方、「方舟の人」では、ローマ法王らしき人物の頭の上に小さな城が描かれています。いずれもが、中世の世界観、肌触りを感じさせるものになっています。
また、全集では各巻ごとに、気球、天秤、椅子などのモチーフを一種のアイコンのように描き、箱と表紙にあしらっています。その巻に収録された作品と、それら小道具の関係に思いをめぐらすと、ちょっと意味深な感じもあり、魅力的な装丁となっています。
今回、三冊の本を復刊するにあたって、まず頭を悩ませたのが、この表紙(正確にはカバー)のイメージをどのようにするか、ということです。
今回復刊する3作品は、いずれも「乱世としての中世」が非常に重要な舞台となっています。とすると、どうしても柄澤氏の手がけられたような、重厚で硬質なイメージへと引っ張られてしまいそうになります。
とはいうものの、それまでのイメージをなぞるだけならば、わざわざスタジオジブリが復刊するという意味も薄くなります。堀田氏の作品のイメージを守りつつ、なにか新しいことはできないか……。
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