本書は、TVの堀田の講義を再現したもの。欄外に注釈をほどこし、より立体的に話の内容を理解出来るようになっている。ゴヤの絵画についても多数収録した。
全13回の内容は次のとおり。
第1回「乱世について」
「二十世紀末もまた大乱世の一つであろう」という視点から、東京大空襲と方丈記の記述を重ね合わせつつ、歴史と現代をつなぐ今回の講座を貫く「視点」について展開する。
第2〜4回「鴨長明」
「方丈記」は文字数を計算すると四百字詰め原稿用紙わずか22枚にしかならないという。そのわずかななかに、非常にリアリスティックな筆致で源平争乱の時代を書き留めた鴨長明の生涯を追う。
第5〜6回「藤原定家」
平安末期から鎌倉初期という大乱世に歌人として活躍した藤原定家。彼が記した日記「明月記」には当時の様子が仔細に書かれており、定家は一種のジャーナリストであったとも考えられる。
第7回「法王ボニファティウス」
史上最悪ともいわれる法王ボニファティウス八世を通じて、ヨーロッパの精神的中心であった法王という存在を考え、さらにヨーロッパそのものの成り立ちについて考察する。
第8〜10回「モンテーニュ」
十六世紀フランスの大思想家、モンテーニュを取り上げる。流血の宗教戦争のさなかに、人間を深く見つめ、人間性を擁護するしなやかな思想はどのように紡ぎだされたのだろうか。
第11〜12回「ゴヤ」
悲惨な死者たちの姿を描いた版画集「戦争の惨禍」などを描いたゴヤ。ゴヤの生涯を追いながら、彼がいかにその「視点」を獲得したかを考える。
第13回「歴史曼荼羅」
現在と過去とを分断するのではなく、重なり合った一つのものとして考える――全編を通じて展開された歴史の捉え方について、改めて語りかける。
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