プロダクションノート

誰もが夢見たアニメーション。
もうひとつのスタジオジブリ。

 従来のアニメーションでは背景とセル画は別々の様式で描かれる。 これはアニメーションと言う手法を採用する際に避けては通れないものだった。 しかし、高畑監督が挑戦したのは、背景とキャラクターが一体化し、 まるで1枚の絵が動くかのようなアニメーション。 アニメーションの作り手たちが一度は夢見る表現である。
 しかし、それは従来のジブリのスタジオを使っては実現できない表現だった。プロデューサーの西村は高畑監督とともにスタジオジブリ本社を離れ、第7スタジオという新たなスタジオを開設する。アニメーション表現の限界を超えるために、もう一つのスタジオジブリが作られたのである。
 天才アニメーター・田辺修を中心に、「線の先に本物を想起させる」という考えのもと、スケッチのような描線で描かれた人物たちは、 従来のアニメーション以上の生命力を勝ち得た。人間・かぐや姫の誕生に成功した理由は、この手法によるところも大きい。
 “ジブリの絵職人・男鹿和雄”が美術監督を引き受けるのは「もののけ姫」以来、実に16年ぶり。男鹿が中心となって描かれた淡彩であたたかな背景美術は、田辺のキャラクターと完全に融合し一体感のある画面が達成された。高畑監督が「この映画は虫と草の映画です」という、その草花と木々に、日本一の美術監督・男鹿和雄の真骨頂が伺える。
 2人以外にも、彼らがいないとこの映画は完成しない、と高畑監督に言わせるほどの才能が結集し完成した本作。一見あっさりしているようで、実は図抜けた画力と膨大な手間の集積によって生み出された、本当の“リアル”を感じさせる表現は、78歳の高畑勲が生み出したメイキング的作品となるだろう。

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