■プロダクションノーツ
6:歌と音楽に溢れた映画
「コクリコ坂から」は、主題歌「さよならの夏〜コクリコ坂から〜」の他に、挿入歌の「上を向いて歩こう」、「朝ごはんの歌」、「初恋の頃」、「白い花の咲く頃」、「紺色のうねりが」、「赤い河の谷間」、そして武部聡志のジャジーでポップな音楽と、歌と音楽に溢れた映画である。
宮崎駿は主題歌に森山良子の「さよならの夏」を推薦した。吾朗監督のアイデアでこの曲を手嶌葵が歌うと映画のイメージにぴたりとはまった。さらに、作詞家・万里村ゆき子に依頼し、新たに2番の歌詞を書き下ろしてもらい、より映画とリンクした主題歌「さよならの夏〜コクリコ坂から〜」が誕生した。 挿入歌は映画が描く時代に、世界的に大ヒットした坂本九の「上を向いて歩こう」。1961年に誕生したこの曲は、1963年にアメリカで「SUKIYAKI」として発売され、ビルボード誌で1位を獲得するという快挙を成し遂げ、これまでのセールスは全世界で1000万枚以上という驚異的な数字を達成している。映画本編の中で、テレビから"歌"が流れてくるシーンがあり、1963年当時青春時代を過ごした鈴木敏夫プロデューサーの推薦でこの曲を使うことに。今回、オリジナルの「上を向いて歩こう」は本編中で2回使用されるが、既成曲を本編中に2回使用するのは、ジブリ作品では異例のこと。伝説の曲「上を向いて歩こう」誕生50年目という節目の年に、ジブリ映画の中で"歌う九ちゃん"が蘇ることになった。
朝ごはんのシーンに流れる「朝ごはんの歌」と海と俊の心が近づくシーンに流れる「初恋の頃」は、作詞が宮崎吾朗と谷山浩子、作曲が谷山浩子、編曲が武部聡志、そして手嶌葵が歌う。手嶌のピュアな歌声が本編を美しく彩る。手嶌も参加している合唱曲「紺色のうねりが」は宮沢賢治の詩「生徒諸君に寄せる」に触発を受けて1番の歌詞を宮崎駿、2番の歌詞を宮崎吾朗が作詞。「赤い河の谷間」は宮崎駿が高校の頃、合唱で歌った曲で、吾朗監督が新たに訳詞をあてた。「白い花の咲く頃」の冒頭は、水沼役の風間俊介が独唱している。
武部聡志の軽快な音楽も重要な役割を果たしている。作品全体を明るくし、希望に満ちた雰囲気を作っている。そして、吾朗監督のアイデアで深刻なシーンに軽妙な曲をつけることに。観る人が、客観的にそのシーンを見ることが出来るので、言いたいことがストレートに伝わるようになったと、鈴木プロデューサーは語る。
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