「コクリコ坂から」
6.20 DVD & Blu-ray 発売決定!

プロダクションノーツ

1:宮崎駿から宮崎吾朗へのリレー

今回、宮崎駿が作った<シナリオ>を宮崎吾朗監督が<絵コンテ>に起こしていった。出来上がった<絵コンテ>と<シナリオ>を比較すると変化があった。鈴木プロデューサーは「宮さんの作ったシナリオを、吾朗くんが"現実的なもの"にした」と言う。
大きな変化があったのは、海と俊の雨の帰宅シーン。「嫌いになったのならはっきりそう言って」「澤村雄一郎 俺の本当の親父」「えっ?」「まるで安っぽいメロドラマだ」「どういうこと……?」「俺たちは兄妹ってことだ……」「……どうすればいいの?」。この一連、脚本では「……」が書かれ、ふたりの会話に「間」「余韻」があった。しかし、吾朗監督は、余韻をカット。会話をテンポアップさせ、ふたりの気持ちをストレートにぶつけ合わせた。そのことにより、観客にふたりの会話がよりリアルなものとして届けられることになった。
ヒロイン・海のキャラクターについても宮崎駿と宮崎吾朗では、捉え方が少し違った。今回、宣伝ポスターを描いたのは宮崎駿。本編では出てこないストライプのエプロン姿の海をファンタジックに描いている。一方、吾朗監督は、「普通にいそうな女の子」として海を映画の中で演技づけしている。
さらに、絵コンテの段階で吾朗監督が追加したセリフがいくつかある。中でも印象的なのが、古い歴史ある校内の建物を壊すか保存するかについて生徒たちが討論するシーンの俊のセリフ。「古いものを壊すことは過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか!?」「人が生きて死んでいった記憶をないがしろにするということじゃないのか!?」「新しいものばかりに飛びついて歴史を顧みない君たちに未来などあるか!!」。吾朗監督がこの映画を作るにあたって「過去の中から、未来が生まれる」という思いを強くしたことが、このセリフに表れている。
宮崎駿から宮崎吾朗へ受け渡された「コクリコ坂から」は、新たなジブリ作品の誕生といえる。

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