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アリエッティたちが住む床の下の世界。ゴキブリやダンゴムシも登場するのですが、不思議と明るく描かれています。米林監督によると、普通、床下にはじめじめしたり、カビっぽかったりするイメージを持つと思うのですが、そういう世界には描きたくなかったのだそうです。 設定を見ていくと、床下ライフを快適にするために、小人たちがいろいろ工夫していることがわかります。そのうちの一つが、床下に明かりを導くための知恵です。外光を、人間が使わなくなったビンをレンズとして使って集光し、アルミホイルで反射させて床下に光を導いています。その光を絵で描かれたニセ窓に導いて、あたかも、地上で暮らしているかのような明るい部屋を作り上げています。もちろん、天気の悪い日や夜は、床下の室内に照明が必要になります。これに関しては、人間世界からちょっとだけ電気を“借りて”きて、利用しています。こうして小人たちは、床下でも快適な環境を整えて、そこでの生活を楽しく豊かなものにしているのです。 |
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2008年に公開された「崖の上のポニョ」が“母と子の物語”であったとしたら、この「借りぐらしのアリエッティ」は“父と娘の物語”といえるでしょう。まもなく14歳になる小人の少女アリエッティは、お父さんのポッドとともに、初めての“借り”に出かけます。ポッドは口数は少ないのですが、娘のことをちゃんと気遣う優しさも持った、思慮深い大人です。アリエッティはそんなお父さんのことを尊敬しています。そんな、父と娘の関係が、映画の中では、こまやかに描かれています。 これは、実は、ジブリ作品では画期的なことなのです。これまで、ジブリ作品に登場した父親は、「トトロ」に出てきたお父さんのように娘に対してフレンドリーだったり、「千尋」のお父さんのように存在が薄かったり…。今回のように父と娘の関係を正面から描いた作品はなかったように思います。ある意味、現代では失われつつある、古風な父と娘の関係が描かれているのではないでしょうか。 |
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ファンタジーにはなぜケルト音楽が合うのでしょう。それはファンタジーがケルト文化をベースにしたもの、つまりローマからもたらされたキリスト教とは違った先住民族たちの伝承や説話をもとにしたものが多いからだと言えます。この映画の原作が生まれたイギリスがファンタジーが盛んな国であるのも、もともとケルト系の民族が住んでいた土地であり、ケルト文化が根付いていることが所以だと思われます。 小人というファンタジックな存在は、キリスト教的な世界観とは相容れないものです。キリスト教では、神と人間以外の知的存在は認めていないからなのです。キリスト教が根底に流れる物語の場合、オルガンやコーラスをベースにした教会音楽や、グレゴリオ聖歌などがよく合います。反対にキリスト教的世界観ではない物語、小人が登場するような物語の場合は、ローマ人やゲルマン人ではない、ヨーロッパという土地に“土着”していたケルト人の音楽が相応しく感じられるのではないでしょうか。そう考えると、「借りぐらしのアリエッティ」の音楽をケルトミュージシャンであるセシルさんにお願いしたのは、全く自然なことなのだと思います。 |
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