制作日誌 1996年2月


96.2.02(金)
 宮崎監督の意向を受け、夜のシシ神の身体(ディダラボッチと呼ぶ)に、CGで流れる星を追加するテストを開始。
 来週からの撮影開始を前に、演助・伊藤氏が撮出しを開始。

96.2.07(水)
 絵コンテCUT680A ~771 まで92 CUT分完成。総秒数は64分20秒。
 本日よりいよいよ本編の撮影開始。


絵コンテ・cut771の末に書かれたコメント
96.2.08(木)
 第三回「映像の世紀」を観る会開催。今回の題材に世界恐慌が含まれていたため、見たあとの話し合いの中心は住専問題。

96.2.10(土)
 初のラッシュチェック(25CUT)が行われる。

96.2.12(月)
 朝一番で宮崎監督、奥井、片塰、保田、山本によりディダラボッチのCG打合せが行われ、テスト撮影の素材作りに入る。

96.2.15(木)
  高畑勲監督も参加して、話題のオールCGアニメ「トイ・ストーリー」の社内上映会がジブリのバーで行われる。スタッフの評判は上々。高畑監督も大満足の様子。因みに宮崎監督は「いそがしい」と不参加。

96.2.16 (金)
 制作部、田中と西桐がスタジオキリーへトレスマシンの調子を見に行く。

96.2.17(土)
 近藤喜文さんの手持ち終了。作監の補佐にまわってもらう。原画がますますピンチ。

96.2.20(火)
 タタリ神の猪が腐る前のCUTを、普通の仕上げ処理からデジタル仕上げに変更するため、動画を描き直さなくてはならなくなった。これは、普通に使われている色鉛筆では、スキャナーに反応してしまい、影線まで拾ってしまうためである。動画チェックに説明するが、当然のごとく大激怒。動画前にアナログ・デジタルの判断を確実につけておかなければならない。

96.2.21(水)
 初のデジタルペイント CUTがCG部に。CUTの流れは、色指定終了後、制作のチェックを通しCG部に渡すこととする。
 デジタルペイント用のシリコングラフィックス製のコンピューターを、仕上げに置くか、CG部に置くかで、菅野さんと保田さんが打ち合わせ。

96.2.23(金)
 (株)ムラオの村尾さん来社、トレスマシンの写りを良くするため、セルに対するマシンの圧力を強化する。

96.2.24(土)
 ディダラボッチと光虫のテストラッシュを行う。ディダラボッチは身体の模様の色等を変更、光虫は有冨君のマジック版の失敗(セルの穴を埋めきれずに少し光が漏れた状態)のものを本番で使用する事に。
 フランスから「宮崎監督は神だ」と宣うおたく旅行者が、秋葉原で住所を聞いたといって突然来社。社内の写真を撮りまくり帰っていった。困ったものだ。(注:ジブリでは見学は受け付けていません)
 18カットの撮影入れ。近日中に二回目のラッシュを行う予定。

96.2.27(火)
 今までのトレスマシンでは不可能とされていた、横掛け上部の絵を簡単に写す方法をキャリアーを改造することで実現。ジブリのマシン史上最大の発見である。

96.2.29(木)
 第四回「映像の世紀」を観る会が開催される。出席者は減る一方。
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