制作日誌 1996年10月


96.10.03(木)
 社内の動画メンバーに、現在のスケジュールが如何に危機的な状況にあるのかを説明し、奮起を促す。

96.10.04(金)
 11時半より会議室にて、ディズニーとの提携に伴う会議が行われる。内容は、ジブリがディズニーに渡さねばならないものを確認し、その担当者を決めること。作品素材、宣伝素材、キャラクターグッズ等様々なものを用意しなければならない。川端氏がその中心となって作業を進めることに。
 音響の若林さんが来社、スケジュール、アフレコの相談を行う。声をあてる俳優で決定しているのはアシタカ役の松○○治さんのみ。その他若林さんが候補として持ってきたのはサン役のと○○○りえ、エボシ役の山○智○等。しかし鈴木プロデューサーの予想通り、宮崎監督に声を聞かせたところほぼ全滅。話し合いの結果、サン役には石○○り子、エボシ役には田○裕○、ジコ坊役にはす○○い、ゴンザ役には○置○二(!)、モロ役には美○明○の各氏が候補となる。(すみません、今はまだ内緒です)
 三原さんが打ち合わせ。CUT1,285~1,301まで17CUT。

96.10.07(月)
 昨日野崎さんがイタリア製コルナゴの自転車を購入し、早速相模湖まで行ってきたそうな。所要時間は、約一時間半と先日同じく相模湖まで行ってきた笹木くんの約半分。それを聞いた笹木くんがかなりショックを受けていた。
 10月11日金曜ロードショーの「耳をすませば」テレビ放送時に流す、「もののけ姫」の紹介コーナーの取材、撮影アリ。
 原画が次々と手持ちを終了させそうな気配あり。桑名、芳尾、稲村各残1、小西残2、森友残4等。宮崎さんに報告し、絵コンテをなんとか打ち合わせ分だけでも上げてもらうよう催促。

96.10.08(火)
 稲村氏の打ち合わせが、手持ちが終わりそうもない二木さんから回収したCUT755~758、760、754の6CUT分で行われる。
 昨年ジブリでテストを受け、入社が決まったが、入国監理局の「実績がない」との一言で待ったがかかっていたデイビット君の入国監理局への書類提出が近づいている。手続きのために山のような資料が必要。

96.10.09(水)
 ここ3週ばかり動画チェック上がりの平均が1,300枚位と低迷している。リスマスクを除くと週1,000枚程度しか外注に回っていない。少しずつ動画マンを増やしつつあるが、動画が内容も後半にいくにしたがって難しくなっているので、なかなか数字に現れてこない。とりあえず社内の人間には呼び出してはっぱをかけたが、もっと外注動画を増やすしかないのか。

96.10.10(木)
 休日ながら朝から新人達が出社。しかし他の動画は1人しか出社せず。笛吹けど踊らずか。

96.10.11(金)
 テレコム竹内さんが来社し、動画に関して話し合いが行われる。最初は「自社作品が忙しくて手伝えない」と話していたが、「もののけ姫」が終了した後、テレコムで制作する合作のテレビ作品を2本受けることを条件に、手伝ってくれることに。

96.10.12(土)
 2カ月ぶりに職場委員会が行われる。
 主にアイジースタジオの作品で活躍している、特殊効果の村上さんに連絡が付き、とても社内だけではできそうもない、タタリ神の特効CUTをもって、谷藤さんと共にスタジオに向かう。今月末より作業開始。

96.10.14(月)
 絵コンテ1,336~1,466まで130CUTが完成する。総CUT1,453CUT、113分36.25秒(1CUT平均4.69秒)

96.10.15(火)
 2時より会議室にて、昨日上がった絵コンテを担当する原画マンを集めて、簡単な説明会を行う。引き続き森友さんの打ち合わせ。CUT1437~1465まで28CUT。
 宮崎監督が、日曜日にBSで放送された「素晴らしき地球の旅・イタリア シエラの町の草競馬」が非常に気に入ったらしく、社内中で「見たか」を連発。あいにく見た人は少なく、ビデオに録った人もいなかった。果たして再放送はあるか。

96.10.16(水)
 特殊効果の橋爪さん来社。タタリ神の特効打ち合わせ。
 コミックボックス三好氏からTEL。先日の「耳をすませば」のテレビ放送時に流された特報を本に載せたいという。鈴木プロデューサーのOKをとり、特報のプリントを丸ごと渡すことに。何時も発売予定を守ることができないコミックボックスだが、今回は三好氏が「3日までに発売できなければ寿司をおごりますよ」と豪語(多分無理)。

96.10.17(木)
 桑名君打ち合わせ。CUT1,421~1,436まで16CUT。

96.10.19(土)
 今週も動画上がり、動画チェック上がりが思うように上がらない。
 ラッシュチェックあり。

96.10.21(月)
 芳尾君打ち合わせ。CUT1,302~1,317、1,362、1,363の18CUT。

96.10.22(火)
 山森君打ち合わせ。CUT1,365~1,379まで15CUT。
 仕上げのスタジオキリーで、今まで上がったラッシュフィルムを上映する。スクリーンはひばりヶ丘のレンタル屋、映写機は昔使っていた古いタイプを持っていく。感想をまとめると、1.残酷シーンがいくつもあったので驚いた。2.コダマがかわいい。3.動画に時間がかかるのがよくわかる。4.背景がきれい。などなど。
 小西君打ち合わせ。CUT1,380~1,403まで23CUT。

96.10.23(水)
 テレビマンユニオンの浦谷さん、鈴木さんが来社。宮崎監督の机の前に超小型カメラを置く。しばらくすると宮崎さんは取材から逃げるように突然鍼へ行ってしまった。
 仕上げのIMスタジオでラッシュフィルムを上映する。
 デジタルペイント済みのCUT166、168の兼用CUTが行方不明となる。さんざん探した末、撮影部の棚から見つかる。

96.10.24(木)
 稲村くんが残りの4CUTを一気に上げる。「作画打ち合わせをぜひ取材したい」と言っていたテレビマンユニオンの浦谷さんに「明日打ち合わせがあります」と連絡するも既に帰宅した後。一応伝言を残す。
 背景スタッフ増員決定。席は2階で背景を描いている吉田氏の横。

96.10.25(金)
 朝11時よりDパートの色打ち合わせを行う。これでやっと溜まっていたDパートのチェック上がりを仕上げに廻せる。
 続いて稲村くんの打ち合わせ。CUT1,336~1,351まで16CUT。
 朝、浦谷さんから電話があり「なんとか打ち合わせ開始の12時迄には誰かを向かわせます」との話しだったが、来たのは12時40分頃で打ち合わせは既に終わった後。
 舘野さんと中込さんが味噌味けんちん汁を作ってスタッフにご馳走する。大好評。

96.10.26(土)
 ラッシュチェックが行われる。猩々のアップCUTが3CUTほど上がってくるが、「気持ちが悪すぎる」という理由でリテーク。ノーマル色を一段落とすことで決着。
 クロマカラーから絵の具が到着するが、モロの体に使っている480番の色が、前回のものとかなり違う、と保田さんから苦情が出る。早速抗議と、作り直しをお願いするFAXを送る。

96.10.29(火)
 朝11時に会議室に原画メンバーを集め、現在の状況と今後のスケジュールについて話しをする。遠藤、二木、山田は遅刻で出席せず。
 井上直久さん来社。

96.10.30(水)
 作監上がりの棚に何も無い状態になってしまった。安藤君に言うも、青ざめているだけ。今まで限界に近い状態で仕事をしてきたため、これ以上のペースアップは不可能だろう。宮崎監督が何らかの方策を取らなければならない時期に来ている。
 特殊効果の前川さんに、タタリ神の特効を2CUTお願いする。
 久々に高畑監督出勤するも、あっというまに退社。

96.10.31(木)
 特殊効果の榊原さんの仕事部屋にお邪魔し、タタリ神の特効をお願いする。「現在は仕事があまり無いのでどんどん仕事を出してくれ」とのこと。谷藤さんによれば、榊原さんは、非常に丁寧な仕事をする人なのでとても助かるとのこと。
 締め切りが来月の2日だというのに、来年度の新人応募があまり来ない。作画13人、仕上げ21人、美術7人、特効は0。マジ?
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