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チベット語の原題 「バルド・トドゥル」(Bardo Thodol)
「チベット死者の書」は、チベット語で書かれた経典を、アメリカの人類学者(エバンス・ヴェンツ)が英語に翻訳するときにつけた題名(The Tibetan book of the Dead)に由来しています。
しかし、チベット語の原題「バルド・トドゥル」の意味している内容はすこし違い、そのなかに生と死に関する深遠な考え方がこめられていました。
この経典は、死に臨む人の耳元で死の直前から、死後四十九日間にわたって、えんえんと語り聞かされる物語なのです。
チベット語の“バルド”は中間の状態を表し、“トドゥル”は耳で聞いて解脱するというような意味を持っています。
この経典の持つ最も大切な考え方は“バルド”という言葉に表れています。「バルド・トドゥル」では、人は死ぬと“バルド”という別の状態に入ってゆくのだと説明しています。
“バルド”は中間つまり途中という意味ですから、死は終わりではなく一つのプロセスにすぎないという考え方でしょう。
人がそれぞれの身体をもって生きているのも一つの過渡的な状態で、生と死をくりかえす大きな旅の途中だと説いているのです。
河邑厚徳/林由香里「チベット死者の書 仏典に秘められた死と転生」
(日本放送出版協会)より
(日本放送出版協会)より