2006年12月
12月1日(金)
早いもので、年の瀬。最近は、めっきり日が暮れるのも早くなり、夕方から何となく寂しさが漂う。そんな折、今年の忘年会委員が招集され第一回の打ち合わせが行われる。今年の忘年会も基本的には昨年のスタイルを踏襲して行うことに。ただ食事のメニューやゲーム大会の内容などを検討しなければならず、これから各担当に選ばれた人たちが知恵を絞ってアイデアを出していくことになるわけだ。いやぁ、一年がたつのは本当に早いですね。
お昼ごろ車のディーラーの営業マンが試乗車に乗って来社。7人乗れる車をと思っていたのだが、思ったよりデカイ。スズキさんが来客と食事に出るには、7人乗りの方がありがたいのだが、美術館に乗っていくには大きすぎて取り回しに苦労する...というわけで、なかなか車種の決定に踏ん切りがつかない。と思ったら、2時間後には、別の車を持ってディーラーさん、再び来社。うーん、この押しの強さに負けそう。車が何になるかは、再びこの場で報告します。
12月2日(土)
野球部を再結成しての初試合が決定。相手は某大手広告代理店Hの草野球チーム。我がチームも練習を重ねてきた結果をようやく披露できることになり、少し興奮気味。その証拠に、試合に間に合うようにユニフォームを急遽発注し、そのためにほぼ2日でマスコットキャラクターを描き起し、ロゴのデザインも作成。慌てて作ったわりにはとても素敵なものになりそう。キャラクターに合わせてチーム名も決まる。名づけて"梶野町ビッグマウス"。弱いのに大きな口だけ叩いてしまいがちな我が野球部に相応しいチーム名だと思います。さて、試合はどうなるのでしょうか?お楽しみに。
12月4日(月)
最近はスタジオ内でも喫煙者が少なくなっている。というわけで、喫煙をするスタッフはデスクでは吸わずに特定の場所で喫煙をするようになっているのだが、仕事の関係でなかなか席を外すことのできないメインスタッフには、デスクでも吸うことができるようにと空気清浄機を新たに導入する。ジブリでは偉い人ほど喫煙する傾向にあり、監督やプロデューサーたちは例外なく煙草をふかしている。やはり、机にかじりつく仕事をしていると不健康だとはわかっていても、煙草が手放せなくなるらしい。
ジブリに謎のメールが届く。2006年版のトトロカレンダーの12月のページにどうやら "なんらかのサービス"があるらしい。子供が見つけて、そのおかあさんが送ってきてくれたもの。「この黒い点のことか?」「色が少し浅い?」、一同、目を凝らしてチェックするのだが誰も見つけられず。「うーん、わからん!」と全員ギブアップしたところに、「おわかりになりましたか?」という答を書いたメールが来ていることに気付く。「ああ、確かに」、子供の観察眼はすごい。悔しいけどスッキリとした一同だった。
「考え込むスタッフたち」
12月5日(火)
スタジオの近所にある△△倉庫に放置してあった生セルを、保管場所として室温管理のしている○○倉庫へ移動させる。ちなみに近所の倉庫は、簡単に言うと床と壁と屋根があるだけで、夏は高温、冬は激寒という厳しい環境の倉庫。この倉庫になぜか眠っていた生セル。一部の表記を見ると「もののけ姫」終了時に移動と書かれているものもあり、きちんとしたものには使えない可能性が。ただし、もうこのセルを製造しているところはなく、かなり貴重な存在。仕上げがデジタルになってから殆んど使用することのないセルなのだが、今でもクミ線を取るときに時々使ったりする。また、数年前にジブリ美術館の企画展示用として制作した「空想の空とぶ機械達」や「ハウルの動く城」にもセルハーモニーという手法を取り入れてセルを使用している。ジブリの場合、今後もこのセルが使用されないという保障はどこにもないのだから。
12月6日(水)
この日の午前は、プロダクションIGさん、ムービックさんとの定例"アニメフェアミーティング"(この日、日テレさんは欠席)。とはいえ出席者の間では、すっかり"カレーミーティング"として定着している。今日もさっそく、場所の喫茶店につくと、全員でカレーセットを頼む。もちろん打ち合わせも行なわれるのだが、やはり主の目的はカレーを食べることになっているような気がしてならない平和な打ち合わせなのである。
「これが、そのカレー。ご馳走様でした。」
12月7日(木)
某自動車メーカーのディーラーと見積もりの件で打ち合わせを行なう。それにしても最近の自動車の型番の多さにはびっくり。同じ車種が、まず駆動の違いで2種類に分かれ、それからエンジンの違いで3種類に枝分かれし、さらにグレードの違いで9種類に分かれ、しまいには、機能の違いで83種類に分かれるのだという。その83種類ごとに値段がつけられており何がなんだか判らなくなりそう。メーカーとしては、さまざまな理由でこのようなシステムにしていると思うのだが、とてもこの83種類の表から選択をする気にはならないような気がするが...。確かに顧客のニーズも細かくなっているので、ここまでしないとユーザーの注文に対応できないのでしょうか...?でも幅広い選択肢は意外と辛いです。やっぱり3択くらいがいいところじゃないだろうか。
取引先主催の忘年会で、赤坂にある"高級すき焼き店"に招待される鈴木プロデューサーをはじめとするジブリの面々たち。そのお店は、棟方志功をはじめとする巨匠の美術品が飾られている。それを観て「ワーオ」と喜んだ海外事業局のアルパートさんは、そこにあった濱田庄司の絵皿を手に取ろうとするが、真っ青になったお店の人にきつく止められて、至極残念そうだった。
「これが何気なく置いてある濱田庄司作の皿。とても貴重なものらしい。」
12月8日(金)
今日は全国的にボーナス日のようで、例に違わずジブリもボーナス支給日。とはいえ、いつものように手元に来るのは明細の封筒だけなのでなかなか実感が伴わない感じ。でも心底うれしいです(涙)。
今日は第二回目の忘年会実行委員会があり、お土産、ゲーム大会の景品などを具体的に決めていったのだが、昨年の忘年会のときも大活躍をしたゲーム担当の出版部の伊平さんが今年も大活躍をしてくれそうで、ゲーム大会の司会進行の衣装まで既に考えられてた。どんな衣装かは当日まで秘密にしておくが、たいへん楽しみなもので、最近増殖しつつある社内のカメラ部大ハシャギの一日になりそうで、ちと心配。
この日の夜、制作業務局長の野中さんのうちで、3スタ2階の一足早い忘年会が催される。ただ、今日の会のメインイベントは"餃子対決"。広報部の永見さんと伊藤君、両者の料理上手が腕を奮ったオリジナル餃子の対決を行なうのだ。夜が、本当に楽しみ。
「というわけで、餃子の仕込みを手伝う制作業務の長澤さん。一番気合が入っています。」
(対決の結果は、オーソドックスなにんにく餃子の永見さんに対し、エビタップリのヘルシー餃子の伊藤君のうっちゃりで、伊藤君、やや優勢という結果であった。どちらも、ご馳走様でした。)
12月9日(土)
朝から雨降りの寒い一日。今日は夕方に整体上がりの宮崎監督を捉まえ、次回作○○○の制作の現状を改めて報告し今後の制作に関することを相談する。もちろん監督も現状に関する認識はしているので打開策の方向は一致を見せているのだが、それを実行していくのは結構大変そう。とはいえ、ここを解決しないことには先に進めないし、この現状を放っておいたら、近い将来制作状況がガタガタになっていくのは目に見えているので、ここが制作の踏ん張りどころだとしみじみ思う。でもこの先、ずっと踏ん張りどころになるのですけど、完成まで・・・。
12月11日(月)
次回作○○○のレイアウト戻しが予定よりも遅れてきているので、作画監督の○藤さんと今後の状況について話し合う。現在のレイアウト戻しの進め方も、作画監督の気持ちを考えると理解はできるのだが、やはりスケジュールありき。どんなにクオリティが良くなってもスケジュールに間に合わなければ、意味のないものになってしまう可能性があるのだから。このクオリティとスケジュールのバランスはとても難儀な問題です。
12月12日(火)
制作の慎太郎が風邪でダウン。どうやらウィルス性の風邪らしいが具体的なことはわからずとりあえず会社を休むことに。巷ではノロウィルスの話題が多いこの時期、とくに心配している。
忘年会続きの広報部員たち。今日は、たまたま何もないメンバーが多く、深夜まで仕事をしている。こう忘年会がつづくと、仕事をするより飲み会の方がだんだん辛くなってくるのは毎年のこと。こういう一日があると、肝臓だけでなく精神的にもホッとできる気がする。おまけに、年明けには健康診断も控えているのである。メタボリックな社員にとって、なかなか意地悪な会社である。
12月13日(水)
この日は、「王と鳥」の公開で一緒だった会社と打ち上げが恵比寿で行なわれる。夜8時ごろJR恵比寿駅に降り立ったのだが、降りるや否や強い違和感が。そう、恵比寿駅の周辺にはクリスマスのイルミネーションが全くないのである。この時期、各繁華街はこぞってイルミネーション合戦を繰り広げているのに対し、この街の静けさといったらどういうことだろう。最近、ちょっと食傷気味なのは確かだが、全くないのも、やる気が感じられなくてどうなのかなぁ、と勝手なことをいろいろ考えていた夜だった。
「たとえば、となりの渋谷の例。みなさんの街でもこんな光景が普通に見られるのでは?」
12月14日(木)
日曜日に行われる我が野球部「梶野町ビッグマウス」の初試合に向けてスターティングメンバーが発表になる。先発を命ぜられたPD室のナヨは、早速緊張をしているようで、少し挙動がおかしくなってきているようだ。ところかまわず、シャドウピッチング(?)を続けている。本番までに肩を壊さなければ良いが。それ以外のメンバーは控え組も含め自主ッチボールやバッティング練習に余念がない。さて、無事、初試合を乗り切れるか?
12月15日(金)
制作進行の新人として採用された三吉(みよし)さんが今日から出社。約400名の応募の中から選ばれた女の子だ。実写の映像制作会社に勤めていた彼女だが、アニメーションの現場は始めての経験。いろいろ勝手は違うと思いますが、持ち前の明るさでがんばって欲しいもの。
こちらは去年の新人、慎太郎の体調が良くなり出社をしてきた。どうやらノロウィルスではなかったものの、この3日間、食べたものはすべて下すという状態が続いていたため、また痩せたようだ。慎太郎には入社時の目標として5キロ太るという目標を立たせたのだが、どうやら全く達成できそうにない。とは言え、健康であれば問題ないんですけどね。体重なんて。。。。体重なんて。。。。(微妙な空気をかもし出すのは、書いている本人が、以前、ジブリ日誌中で好評を博したダイエット日誌の筆者だからか?)
美術館日誌の12月11日に取り上げられている"里芋"がジブリにもやってくる。さっそく料理上手な広報部のイトノンが泥を洗い落として、明日の調理に備えている。むくときに泥がついていると良くないので、ご覧のように洗うのだそうだ。良かった、皮ごと調理するのではなくて...。
「明日、調理されるのを待つだけになった里芋たちのあられもない姿。」
12月16日(土)
今日は年末恒例の商品部社内バーゲン!社員への福利厚生的な意味も含めて、ジブリグッズを超特価で大放出。毎年のことと言え、バーゲン会場の様子は物凄いものがある。品物を並べるのに前日から準備しているのに、殆んどの品物は10分ほどで無くなってしまう。中には大きなダンボールにとりあえず片っ端から品物を詰めて行き、あとで必要か否かを吟味するスタッフもいて、後から掘り出し物が出てきたりするので、大勢のスタッフがとりあえずウロウロしている。それにしてもみんな興奮気味で楽しそう。
「バーゲン開場5分経過の様子。吟味している余裕はありません」
「こちらが、約15分後の様子。ご覧のとおり」
もうひとつうれしいことは、我が野球チーム「梶野町ビッグマウス」のユニフォームが明日の試合を控え、ようやく届く。新しいユニフォームを手にするとワクワクするもの。明日の試合は、グランドのコンディションの悪化で一時は中止になりかけたものの、場所を変更して決行することに。対戦相手のH報堂の草野球チームはどうやら本格的に強いチームらしく、我がチームメイトもドキドキしている様子。さあ、試合はどうなることやら。
昨日の里芋は見事な"けんちん汁味噌仕立て"へと変貌を遂げました。みんなで揃って、いただきます。ちょっと薄味だけど、大変おいしく出来ました。これで、里芋も無事、成仏してくれることでしょう。
「いつものようにテーブルでご飯をいただく3スタのスタッフ」
この日の夜、汐留で日テレに設置される「からくり時計」の作動テストがあるというので、ジブリから野中局長と広報の西岡が立ち会うことに。夜、通行人が減ったところで密かに行なわれた作動チェック。その出来栄えは予想をはるかに超えていた。一般公開後は、なんだか物凄い人気になりそうで、ちょっとドキドキしてきた夜だった。
「ただいま、オールナイトで最終チェック中。何度も試運転を行ないながら問題はないかチェックしていく。」
12月18日(月)
次回作○○○の原画が数カット上がってきた。原画が上がることは制作にとって、とてもうれしいことなのだが、上がってきたうちの1カットが何と1カットで50レイヤー、1500枚を超える化け物カットだったのだ。それを見たとたんに嬉しさは飛んでしまい、動画以降の作業に関する不安が大きく圧し掛かってくる。もちろんこのシーンのカットは特別なので、全てのカットがそんな化け物カットにはならないとは思うのだが、今回の作風は作画で動かすことをテーマにしているので、いつもより枚数や描き込みが多くなるはず...。完成時には何枚になるやら。いや序盤から全く予断の許さない作品になってきたと思う。
昨日は、野中局長の40何回目かの誕生日。ということで、3スタでは、一日遅れなのだが、バースデイケーキを準備してお祝いを。このときばかりは、いつも厳格な野中さんも照れくさそう。ところで、お祝いの蝋燭なのだが、細くて長いローソクが4本。本来なら5本立ってもおかしくない年齢なのだが、一本はおまけということで...。
「クリスマスケーキ一色の時に、なんとか発注して頼んだバースデイケーキ」
12月19日(火)
以前ジブリで働いていた大○さんが、現在所属しているガイナックスの撮影スタッフとともに来社。ガイナの撮影班は最近出来たばかりとのことで、ジブリ映像部の長、奥井さんにも登場していただきいろいろ説明をしてもらう。とはいえ、ジブリはかなり特殊なスタジオなので、例えば使っているソフトウェアにしても、いわゆる一般的にアニメスタジオで使用しているものとは違うので、参考になったのかどうかは疑わしいもの。いろいろ話をしていると、ひとつのスタジオにあらゆるセクションと設備、加えて優秀な人材がいることはとても恵まれているということが再認識される。お金だけでも解決できないし、人材だけでもお金が無ければ進まない問題もある。その二つをそろえた上でスタジオを動かしていくのは、ほんとうに大変なことなのだとしみじみ思う。
この日の午後、日本動画協会の委員会で、秋葉原に出かける広報部N。毎月の定例会なのだが、今回は意気込みが違う。そう、秋葉原デパートが、今月末でその55年の歴史に幕を閉じるからだ。30年近く通った秋葉原デパートがなくなるということで、やたらと写真を撮ってきたのだが、同じような人が何人もいて、思わず親近感を覚える。まだ、10日以上あるのにこれでは、大晦日は大変なことになりそう。来月からは、秋葉原もさびしくなるなぁ、とちょっと「おセンチ」になるのであった(死語?)。
「大晦日は、各局のテレビで中継されると思われるJR秋葉原駅前。」
12月20日(水)
次回作○○○の原画が久々に数多くあがってくる。山○さんが溜め込んでいたカットがドッと出たのだが、制作の気分は、少し早いクリスマスプレゼントを貰ったような気分。まだクリスマスまで時間はあるので、もっともっとプレゼントが来ることを期待する制作の面々なのである。
この日は、汐留の「日テレ大時計」の完成披露式典。鈴木さんをはじめ、ジブリからも数名が出席する。間近で見るからくり時計は迫力もすごく、異様なものが登場してしまった感じ。是非とも、ご覧下さい。ただ、時計なのに、正時のからくりが一日数回しか起動しないのは、ちょっとファンサービスにも欠けるし、時計としてどうなのよとも思うが、近隣の騒音のことを考えたら、それも致し方ないかとあきらめる。この時計には、宮崎監督も並々ならぬ関心を持っていて、残念ながらこの日は見に行けなかったのだが、そのうちこの目で見ようと画策しているというもっぱらの噂もあり。
「日テレ氏家議長と鈴木プロデューサーの珍しい2ショット。からくりの起動レバーを手に...?」
「からくり時計の立体造形を手がけた、ジブリ美術館でもおなじみの鯱丸氏。宮崎監督の信頼も厚い。」
12月21日(木)
そういえば書くのを忘れていたのだが、先日の日曜日に行われた某広告代理店Hとの野球の試合は残念ながら7対6で負けてしまいました。点数を見る限りでは善戦した感じですが、相手チームが間違いなく政治的な配慮で(?)手加減をしてくれたお陰だと思っている。この初試合によって、これからの課題も判ってきたのだが、それは、「まずは野球を知ること」。野球は投げて打つだけのスポーツなのだが、個人スポーツではなく9人のチームスポーツなのだ。守備に関して言えば、そのひとつのボールに対して、すべてのポジションが機能的に動き1点を奪われないように動いていくスポーツといえよう。攻撃に関してもしかり。それを学んでいかなければ戦いには永遠に勝てないのだということを学んだ初戦だった。
ジブリには、いろんなサークルが存在する。この日誌でも有名な野球部とか、マラソンに情熱をかける有志が集まるランラン倶楽部、そのうち活動開始する鈴木さんも参加しているスキー部など。そのほかにも、ひそかに活動する秘密結社「第九の会」なんていうのもある。つまり、「のだめ」で目覚めてクラシック音楽の生演奏を聴きに行くことになったメンバーの会だ。この日も、いろいろ画策して入手したチケットで、読売日響の第9を聴きにサントリーホールまで出かける。初めて第9を聴いたシステム管理の佐々木さんは、開始から60分以上緊張しっぱなしだったそうなのだが、惜しくもフィナーレでその糸が切れ、眠りに落ちそうになったという。次回は第9ではなく、もうちょっと短い曲にしたいと思います。
「毎年、アークヒルズのイルミネーションを見るのも第9の季節の楽しみです。」
12月22日(金)
「イバラード□□」の音響打ち合わせが行われる。まずは、監督の井上さんを交えて、ラフに効果を当てはめたものを観てもらう。もちろんラフなので細かい部分のことはいろいろありそうなのだが、大筋では物凄く気に入ってもらえたようで一安心。やはり音というのはとてつもない影響力があるということを痛感する。アニメーションでは特に音を入れた時点で、より具体的というか生々しい感じになる。井上さんは、それを映画的と表現していたのだが、一枚の静止画が、絵を動かすことによりアニメーションになり、音をつくことにより映画になる。この作品は、その部分が気持ちよく体現できる作品になることでだろう。完成は来年になのだが、楽しみです。
12月25日(月)
巷はクリスマス。スタジオでは今年もクリスマスケーキが全員に振舞われる。ただ、週末にかけてケーキを食べ飽きているのか、何となくみんなの食いつきが悪いような気がしたのは気のせい?もしくは迫り来る健康診断の足音が気になっているのかも...。今年も、同時にクリスマスツリーがバーに飾られ、夜はツリーを囲んでのささやかな飲み会も敢行。さて、次回作○○○のレイアウト戻しは先週から順調に進み始めている。今週もこの調子で進んで欲しいもの。
「一日だけのクリスマスツリーの前でしばしの憩いのひとときを」
12月26日(火)
朝から、どしゃぶりの雨に見舞われる。12月としては記録的な雨らしく、夜になっても、その勢いは衰える気配がない。近くの水が溢れないか、ちょっと心配になった宮崎監督は、いつもより一時間も早く帰宅したそうだ。ただ、本当は心配というより、家の周りの川の様子がどうなるか興味津々だったからに違いない、と周りのスタッフは思っていたそうだが。
「雨、雨、雨。この日も忘年会だったスタッフは下半身がズブ濡れ。」
12月27日(水)
次回作○○○の原画が順調に上がり始めた。このままだと、年内予定の目標数字も何とかクリアできそうな感じで、制作の伊藤くんもテンションがあがってきている。まだ滑り出しではあるが、この時点でつまずくと後に引きがち。この調子で来年からスタジオをフル稼働させていきたいもの。
昨日とは打って変わって空は晴れ渡り、水銀柱はグングン上昇し、摂氏20度を超える、シャツ一枚でも過ごせる10月の陽気となる。昨日の雨できれいにスモッグが洗い流されて、スタジオの屋上からも、富士山がくっきりと姿を見えるということで、朝から写真好きなスタッフがしきりにレンズを向けていた。夕方には宮崎監督も夕陽を眺めに姿を見せ、しきりに、前日の「爆弾低気圧」の話で盛り上がっていた。これから、10年間にどんな異常気象や噴火が起こるのだろう、今の子供たちは可哀想だと、しきりと語る監督だった。
「遠くに望む富士山と、夕陽と雲」
12月28日(木)
各フロアから加湿器の要請があったので、倉庫から取り出し稼動させる。スタジオで使用している加湿器は最新式のものは使えません。なぜならハイブリッド式のものを使うと動画用紙にカルキの白い粉が付着するからです。日常生活では気にならない程度のものなのだろうが、細かい描き込みする紙の上では気になるもの。そのためにわざわざ単純な構造のスチーム式加湿器を探して購入している。最近は、なかなかこのタイプのものが入手しにくくなってきているので、見つけたら少し買いためておこうかとまで思う。
忘年会準備でスタッフは1スタのバーでお土産作りと打ち合わせ。明日のゲームで懐かしの「イモキントリオ」をやることになっているゲーム班の出版部伊平、制作渡辺・伊藤の3人は、衣装に着替えてリハーサル。当時のことをほとんど覚えていないスタッフもいるので、映像をYouTubeで見つけた伊藤君の指導のもと、振り付けの練習をしているらしい。でも、どう見てもドリフのズンドコにしか見えないと思うのだが...。明日が、やや、いや、とても心配なのであった。
「これがその踊り。みなさんはどちらに見えますか?」
12月29日(金)
今日は、2006年の仕事納め。朝から、大掃除に、やり残した仕事に、年賀状書きに精を出す。ブラインドをはずして清掃するのも、年に一度の風物詩。各部署の新人が中心になって、ご覧のような集中清掃を行なうのだ。
掃除が終わると、各部署に鏡餅としめ飾りを設置。これは、なぜか毎年、制作業務部の荒井さんの役割。各部屋と水周り、トイレなどに設置して歩くのだ。これも、毎年恒例の儀式のひとつである。
さて、1スタのバーでは、そろそろ忘年会の準備が始まる。手作りの宴なんだが、食べ物は、東小金井北口商店街の皆さんにお願いし、果物と漬物のみをスタッフで切り分けてお皿に並べることにする。制作業務の品川君は、慣れない漬物きりにチャレンジし、「厚い」「薄い」「角度が悪い」と、しきりに周りからダメ出しをされていた。
忘年会は、午後4時開始。宮崎監督のあいさつに続いて、すぐに、商店街の皆さんにお願いしている出店にゴー。今年は昨年よりグレードアップして、カレーやステーキも登場。クレープ焼きにチャレンジするなど、商店街の方たちと触れ合いながら、わきあいあいとした雰囲気だった。
昨年はHGが登場したこの会に、スペシャルゲストとして、「さかなくん」(本当は美術の福留さん)も登場!?さかんに周囲からいじられていた。
産休中のスタッフも子供連れで参加。懐かしい顔の登場に旧交を温める。
午後3時から集中特訓を受けた「イモキントリオ」が登場。本番はバッチリ決まってた!?
ビンゴで今回の景品の目玉のWiiセットを当てた商品部部長の今井さん(最近は、ジブリ美術館のショップの店長としての方が有名かもしれません)。「苦労を重ねると、いいこともあるねぇ」と本当に嬉しそう。家族で楽しんでください。
最後は、もちろん、鈴木プロデューサーの締めの言葉。今年も大役お疲れ様でした。
というわけで、2006年のスタジオジブリはこれで、仕事納めです。2006年は、「ゲド戦記」の制作と公開もあり、とても忙しい一年だったように思います。実をいうと、忘年会が終わった現在、引き続き2次会で飲んでいるスタッフもいるのですが、各部署では、まだ、掃除や年賀状書きが続いているようなんです。果たして、何時になったら帰れるのでしょうか。
こんな慌ただしい歳の瀬ですが、皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。