2003年2月

2月1日(土)
 今日から、作画の人達が一時帰休明けで出社。10時から宮崎監督が、久しぶりに戻ってきたスタッフに「ハウル」の説明&顔合わせをバーにて行う。

 今回一時帰休の間に作画の場所が変わった為、戻ってきた作画さんは、少々戸惑い気味。ただ今までず~っと一スタの同じ場所で仕事をしてきたため、「新鮮」との声もあり。

 2時30分から、テストで作ったラッシュを試写室にて上映。城の動きに皆感心。その後、月曜から作画打合せがあるので、その為の処理打合せをメインスタッフで行う。

 今回、演出助手として参加している、清川君、鳥羽君とカットの流れを、どうスムーズに動かしていくかを制作一同と打合せ。


2月3日(月)
 朝の10時前に宮崎監督が出社。途中までだが、Bパート(189cut/1094秒)のコンテを持参。その後、原画の人を全員よんで会議室で状況説明後、先行して入る原画さんがいよいよ作画打合せ。Aパートのほんの一部を残して作画打合せ終了。明日はBパートの打ち合わせが行われる予定。作打ちの終わったスタッフは早速作画作業開始。

 作画にまだ届いていなかったパーテーションがこれまた朝一で到着。制作の居村君と斉藤君が2人でせっせっとセッティングをするも、数が多いので夕方までかかりっきりになる。ご苦労様。

 鈴木プロデューサーの部屋があまりに寒いため、床暖房を入れることになり、その準備に部屋のものを廊下に出し始めたのだが、とても仕事場にあるものとは思えない怪しいものがたくさん廊下に並んでいた。


2月4日(火)
 今日も処理打ちと作画打合せが行われる。途中までとはいえ、上がったBパートもほぼ作画打合せが終わる。ここまでは快調な滑り出し。

 突如某所からおにぎり100個と簡単なオードブルの差し入れがある。余っていたお歳暮のジュースなども用意しつつ、6時からバーにて簡単なパーティ形式の食事となる。久しぶりに人がひしめき動き回るバーを見たぜ、と感傷に浸る間もなく、あっという間に皿は空っぽになりスタッフはすぐに仕事へ戻ることに。

 3st1階にあったマック版QARを2階にもっていったところ、上手く起動しない。制作の斉藤君が1、2階の間を行ったり来たりしてもう大変。詳しいことが良く解らない私は、影でがんばれと言うしかない。ああ無能だ…。


2月5日(水)
 昨日Bパートほぼ作画打ち合わせ完了と書いておきながら、今日も朝からBパートの一部を作画打ち合わせ。

 連日、作画打合せで大忙しの演出山下さんだが、レイアウトが上がるまで少し手が空く為、打合せが済んでいないカットを、ほんの数カットだが、自ら進んで作業することに。

 昨日から、制作の斉藤君が頑張っているマック版QARやはりどうしても上手く可動しない。いろいろ問題があるらしいのだが、私には良く分からない。一つだけいえることは今まで動いていたのが奇跡だったらしいということ。不思議なバランスで稼動していたものが、引越し等で、ケーブルを付け替えたりしたところ、正常に戻って動かなくなったらしい。午後になってあるソフトを入れれば直ることが発覚し、さっそく近所のパソコン専門店に行くも、ソフトが無くあえなく退散。斉藤君の苦難はまだまだ続く。

 夕方、宮崎監督が制作の部屋に下りてきて、上機嫌で一頻り昔の飛行機の話をしていた。そのあまりの知識量に、制作陣はただただ聞き手に回るばかり。


2月6日(木)
 「ハウル」は、ハーモニーという特殊な処理を行うため、久しぶりにセルを使う。千尋でも組み線にセルを使っていたが、画面に出る部分でセルを使うのは「もののけ姫」以来だ。倉庫に入れていたカーボンやセルを朝から運び出す。う~ん、この手触り、この匂い。よみがえる若き日の思い出・・・。

 ハーモニー処理は、セル絵具を使うため、大量のセル絵具を必要とする。一時帰休中に小瓶にわけて置いたが、あまりの量に制作の隅に置きっぱなしになっていた。しかし、これでは自由に絵具を取り出せないので、絵具を入れる棚を購入。寸法も事前にきちんと測って置いたのでばっちり。(ジブリ制作には、非常に珍しい事だ。)

 制作の居村君が出勤時から様子がおかしい、目が虚ろ。どうやら本格的に風邪をひいた様だ、本人の体も心配だが、「ハウル」が動き始めたばかりで、他のスタッフにうつるとこれまた大変な事になるのでそうそうに帰ってもらう。そういえば野中氏の部下の西村君も二日ほど風邪かインフルエンザで休んでいるし、各所であいている机がちらほら。これから先はまだ長い、頑張ろう! みなさんも体にはくれぐれも気をつけて。


2月7日(金)
 やはり、昨日の具合から見てやばそうだった制作居村君。本日あえなく撃沈。・・・昨日に引き続き、倉庫へ。セルが保管した数とあわないので、再確認。有りました、そこにしか無いと思い込んでいたため、完全に見落としてました。皆さんも探し物の時は、部屋の隅々まで。

 宮崎監督が、美術部に頼んでおいた、絵が完成。大きな「豚の丸焼き」の絵が、制作の食いしん坊、渡辺と神村の横に。二人して「くいてーとか、腹減ったー」とか大いに盛り上がる。「監督、さすがです。まさにうってつけの場所です。」と他のスタッフも、盛り上がる。

 山下さんが手空きの為に入ったカットのレイアウトが上がる。初レイアウト上がりだ。


2月8日(土)
 居村君本日も撃沈。電話があってただの風邪と解る。インフルエンザでなくて良かった。

 昨日から始まった、1stの広報と会議室の床工事。あまりに寒いので、床暖房を設置するのだ。2スタの構造的に無理なのは、解るが、なんとなく羨ましい制作陣。

 作画打合せもひとだんらく。そろそろスケジュール表を貼り出さねばと大きなグラフ用紙を買いに行く。

 作画の大橋君の結婚を祝い会社近くの居酒屋で行う。作画のスタッフは、ほぼ全員出席。めでたいことです。
 ここのところ、ずっと働きづめで休日の無かったポスプロの古城さんと津司さん、本日休業のためポスプロ班が閑散としている。


2月10日(月)
 作打ちから1週間、ラフレイアウトチェックの為、次から次へと原画さんが宮崎監督のもとへ。うれしい悲鳴か。

 制作、居村君が本日から復帰。と思ったら、土曜日に病院で「風邪です」と言われていた制作田中さんがなんと違う病院で「インフルエンザ」を宣告されお休み。風邪と言われた最初の病院では「インフルエンザじゃないんですか?」と食い下がったそうですが、「風邪です」と言われ検査もしてもらえなかったとか。みなさん病院は選びましょう。

 制作、神村が夕食3回という暴挙に出る。内容は、インターナショナル武田さんの余った昼弁当、高畑監督達の夕食の残り炒飯等、広報の昼弁当・・・。体壊すぞ。


2月12日(水)
 午前中、録音監督の若林さんが来社。「ハウル」1cut分のプレスコの打合せ。その場で緊急に録音せねばならない事になり、近々録音予定。

 朝から、渡辺・古城両氏のマックがおかしい。両氏とも何とか自力で修復を図る。夕方には、古城さんのマックは、無事起動。しかし、渡辺さんのマックは、初期化して再インストール。夜遅くまでモニターとにらめっこ。

 昼過ぎに、ジブリが作画机をいつも注文しているところから、作画用の側机が届く。一度に10台という多さに、一時制作の入り口は、壁が出来たような状態に。

 14:00から今年初めてというか、「ハウル」が始まってはじめての制作会議を行う。まあしょっぱななので、これといった議題は、出ず今後しっかりやりましょうという事に。

 制作会議で一番の問題になった、マック版QAR。どうも調子がよろしくない。今ではすっかり専属みたいになった斎藤君が深夜まで格闘。

 棚が一杯になったため一時中断していた絵具の整理、今日棚が届いたので早速再開。

 昨日、アカデミー賞の長編アニメ部門にノミネートされた「千と千尋の神隠し」。しかし、会社内では、何時も通りの雰囲気。うーんさすがに時間がたつとあまりピンとこないみたいだ。そんなことより、長い歴史を持つ短編アニメーション賞に、山村浩二氏の「頭山」がノミネートされたことがうれしい。なんとか受賞して欲しいもの


2月13日(木)
 作画の一時帰休明け初めてのジブリミーティングが行われる。鈴木本部長からアカデミー賞等の報告がある。

 アカデミー賞当日、鈴木さんは、どうやらタキシードを着るそうなのだが(もちろんレンタル)、その姿がテレビにどう映るのか、3階のスタッフは、それぞれその姿を想像しつつニヤニヤしている。

 昼過ぎに、○○さん来社。「ハウル」の原画をお願いする事に。

 久々に制作の夕飯がさかい亭となる。(近くの弁当屋)になる。丸々1年以上食べてないが、味は相変わらず。値段は据え置きだった。


2月14日(金)
 夜帰り際にレイアウト上がりを出して帰っていく人が数人。あーレイアウト上がりを受け取るのは、ひさしぶりだなー

 「キリクと魔女」の初号が行われる。何事も無く無事終了。

 りそな銀行のCM試写行われる。2月16日から放送開始。

 今日は「バレンタイン」。恒例のチョコがスタジオのあちこちに配られる。当分甘いものには困らないぞ。


2月15日(土)
 Bパートのコンテが上がる。「千尋」よりはるかに早いペースだ。この調子で最後まで行って欲しいが・・・。それにしても中身は大変。

 前にも書いたが、今回久しぶりにハーモニーの為にセルを使用する。当然カーボンも使うがこれがうっかりとんでもない所にしまい込んでいた為、確認の為トレスマシーンで試す。結果は、OK。あの環境でよく持ちこたえました。

 制作の渡辺さんのマックが調子が悪いので、初期化したら元の様に快適に動きだした。しかし、前回インストールしておかしくなった、原因であろうソフトを又、懲りずに入れる。おそらく又、初期化することになるだろう、と横にいる制作神村は、冷ややかに作業を見ていた。


2月17日(月)
 作監第一弾が上がる。ハーモニーのみも含むカットだが、前の部署の上がりによって次の部署が動き始めると「これからだ!!」と言う雰囲気が出てくる。

 引越しの影響から、制作用のカット保管棚が無くなってしまったので、つい先日ばらしたばかりの、スチール棚を急遽倉庫に取りに行く。組み立てながら「なんだかなー」と思っていたのは、私だけではないはず。

 美術館で「となりの山田くん」のカットを整理するため、「山田くん」の複雑な作り方を説明しに行く。説明しながら、辛かったことや楽しかった事等々を思い出し、つい感傷に浸る。

 「キリクと魔女」日本語吹替えバージョンの社内試写が行われる。これで何度目か分からないほど見ているのだが、ついつい最後まで見てしまう。ユッスー・ンドゥールの音楽も含め、実に不思議な魅力に溢れた作品だ。


2月18日(火)
 ハーモニーで長セルを使用することになるも、在庫なし。慌てて倉庫まで取りに行く。

 夕方から、「ハウル」の細かなスケジュールを決めるべく、会議。しかし、「千尋」の時より作業工程が少し変更になっているため為、明確な結論が出ない。後日再び相談。

 同じく夕方、「猫の恩返し」の森田監督がお子さんを連れてくる。目のくるっとした可愛い男の子だ。制作では、「笑って話せるのは、今のうちだけだよー」とか笑えない冗談を言いながら話しかけていた。少し怯えていた模様。


2月19日(水)
 宮崎監督がBパートに新たに追加カットを設定。いきなりレイアウトから描いてしまった為、それを縮小コピーしてコンテに貼り付けメインスタッフに配布。

 制作、居村君と斎藤君が、ハーモニー用のマシンをかけにいくが、これが少々長い&カーボン老朽化のため二人して悪戦苦闘。

 チェックの終わったカーボンを倉庫に戻しに。しかし、その倉庫も、もういっぱい。何とか場所を確保したが今後の出し入れを考えるともう少し整理せねば。

 制作神村が、スケジュール表を作る。今回ハーモニーとかCG関係とか工程が少々複雑な為かなり難航しているよう。


2月20日(木)
 昨日に引き続きCG部の片塰さんが風邪でダウン。

 朝、疲れた声で渡辺さんから電話が、最近かなりバタバタしていたので疲れが溜まったようだ。一日ゆっくり?休んでください。

 ジブリの様々な機器交換の為、朝からトラックがジブリの前に2-3台止まっている。荷物の場所確保のため制作の車を一時避難。

 2stの通路が寂しいので腰の高さまで飾り板を付ける。夕方完成。雰囲気がずいぶん変わったとスタッフにも好評。


2月21日(金)
 Bパート後半の処理打合せが行われる。

 スケジュール表が出来たので、制作居村君に清書して貰うが、完成間際、神村氏の計算に間違いがあることが発覚。もう一度、はじめからやり直し。神村氏は「ごめんなさい」と平謝り。

 3月から新たに作画に参加してくれる人がいるので、制作の渡辺と神村がBパートを描き上げたばかりの宮崎監督にコンテの催促に行く。


2月24日(月)
 朝から定例の制作会議。先日、宮崎さんと鈴木さんにスケジュールを見せて、OKが出た事を報告。
 会議後、神村が社内の原画さんに状況を聞いて回る。状況的には、問題無いようだ。

 先週末途中で間違いに気が付いたスケジュール表を、朝から居村くんがせっせと書き直し。今回、作画が3箇所に分かれた為、3箇所に貼り出す事になり、紙が足りなくなったので小雨の降る中買出しに。


2月25日(火)
 今日は朝からレイアウトチェック済みカットがどっと戻ってくる。

 一時帰休明け後も、某所で引き続き作業を続けていた約3名の原画マンが、来月から戻って来る為、先に読んでおきたいと、絵コンテを取りにジブリへ寄る。

 遂に、スケジュール表3枚が完成。ボードに貼り、各スタジオに設置。うーんこれから毎週三箇所に書き込みに行くんだなーとしみじみ思う制作陣。

 「山田くん」以降あまり行っていなかった弁当屋に制作の斎藤くんが行き始めると、やはり値段とボリュームが魅力なのか、演助までが加わり大繁盛状態。


2月26日(水)
 レイアウトUPがスケジュール表の制作予定カット数を越える。奇跡じゃ~。今回は順調な滑り出しだ。

 今年もやって来ました、「○○○○春のパン祭り」制作は、毎年集めているので昼ごはんをパンと決めて点数の高いパンを漁っている制作約2名。

 出版部の手伝いで上野まで借りた資料を返しに。三多摩地区は、走りなれているのだが都心は・・・。帰り道を間違い首都高速を使いやっとの事で無事帰還。いやー都会は怖い。
diary03_030220.jpg
今日の一枚