2000年5月

5月1日(月)
 ジブリにタケノコが送られてくる。早速保田さん等一階の面々がゆで、二階の作画スタッフ達にも配られる。

 制作斉藤君が前髪にメッシュをいれて、恥ずかしそうに出社。昨日アパートに泊めた友人達に、夜の内に脱色されたらしい。


5月2日(火)
 美術館作品アフレコ・ダビングのスケジュールについて話し合う。ここまでが大幅にずれ込んでいることもあり、もうこれ以上下がれないスケジュールとなる。逆に言えば、尻が見えると言うことなので、不安感はなくなるというものだ。後は前進あるのみ。

 高畑さんによる新人への講演が行われる。


5月6日(土)
 東京テレビセンターにてギブリーズをフィルム化するためのダビングが行われる。音響監督の林さんが、別室で行われている押井監督の作品とかけ持ちだったため、挨拶がてら高橋プロデューサーが押井監督にお土産を持っていくも、既に帰った後。


5月8日(月)
 新人向に、鈴木プロデューサーの講演会が行われる。

 ゴールデンウィークも終わり、宮崎監督が兼ねてからの約束どうり、Bパートの絵コンテを全てあげてくる。制作は当然、コンテのコピーに忙殺される。これでA・Bパート併せて約50分。予定ではDパートで終了予定。ちなみに現在レイアウト作業に追われている宮崎監督は「早くCパートを描きたい」と意欲満々。


5月9日(火)
 原作者の方にお願いしていた美術館作品のメインタイトルが到着。早速仕上げでスキャンし、何パターンか色を付けてもらうことにする。オープニングと合わせてみるのが楽しみだ。


5月10日(水)
 美術館作品ラッシュを、12時より行う。

 野見祐二さんが来社し、3時より音楽打ち合わせ。二作品のライカリールに、打ち込みの音楽をつけて検討を行う。映像だけだと小品と言った感が強かったが、音楽によって、より映画としての厚みが加わった。

 5月4日に放映されたNHKの特番をみた視聴者から、原画の松尾さん、田村氏宛にファンレターが届く。喜ぶ二人を前に、同じようにクローズアップされた原画米林氏は複雑な表情。「大丈夫。制作には、マロ様(米林氏のあだ名)ファンクラブがありますから。男ばかりだけど」との制作からの熱いエールも、今の米林氏には届かないようだ。


5月11日(木)
 作画米林氏に、待望のファンレター(?)が手渡される。差出人は、元ジブリのある先輩アニメーター。先日のNHKの放映にたいし、米林氏だけファンレターが来なかったときき、急遽書いてくれたらしい。「あいかわらず原画の中枚数が足りないので、絵を見て一目であなたとわかりました」との痛烈な一言から始まり、「いつもあなたをみています。あなたのファンより」で締めくくられていた。

 佐々木さんがアマゾンコムで注文した書籍が船便で届く。分解写真で構成された動物や人の動きの解説書で、希望したアニメーターに手渡された。


5月12日(金)
 美術館作品最終スケジュールがほぼ固まる。来週頭に各部署との調整を行い、決定の予定。


5月13日(土)
 美術館作品の、アフレコについて話し合う。稲村班はプレスコでの作業のため、群衆以外は基本的に取り直しはなし。芳尾班は6月頭に、アフレコを行うことを決定。

 制作居村氏が、ついに「まるしゅう」のラーメンを食べる。ここは制作中で「うまい。うまい」と話題になっていたラーメン屋で、居村氏も何度か足を運んでいたのだが、満員で一度も入れずにいたもの。食べてよほど満足したのか感想を聞かれて考え深げに「美味い」と一言。


5月15日(月)
 4時より仕上げ、撮影を交えての最終アップの確認を行う。稲村班は7月21日、芳尾班は8月4日初号を予定。しかし今は、6月予定のアフレコ、ダビングに向けて、まず動画にがんばってもらわなければならない。

 本日でアルパートさん日誌が終了。

 森田班に演助として来てくれることになった○○○氏が来社。高橋さん等と事務的な話し合いの後、三スタにて早速森田さん、美術の田中さんと共に作品についての会議に参加。


5月16日(火)
 音楽の野見祐二氏が来社し、美術館作品の音楽打ち合わせを行う。前回の打ち合わせに基づき、少し手直しした物をライカリールに合わせて、試写室にてチェック。芳尾、稲村両演出、宮崎監督からOKがだされ、野見氏は稲城氏と録音についての打ち合わせへ。6月頭には野見氏、稲城氏等が、チェコに行くことが決まりそうだ。


5月17日(水)
 制作神村氏が新作の背景を受け取るため、飯能の山本二三氏宅へ行く。去年、美術館作品の音録りに伺ったときの小犬はすっかり大きくなり、立派に番犬としてつとめていた。


5月18日(木)
 9月に行われる予定の社員旅行ポスターを掲示。今回は某氏念願の北海道に決定。といってもあまり時間が無いので、ジブリを夕方出発、夜行列車で札幌まで行き、成吉思汗を食べたらすぐ帰ってくるという強行日程。今の状況だとこの旅行が「千と千尋の神隠し」の追い込み前の最後の休息か。
・稲村班の作監残りカット数が、133カット中8カットと、一桁になる。作監アップまで後もう一息なので、がんばってほしいものだ。


5月19日(金)
 森田さん作品の資料用に三銃士、ホームズ関連のビデオを借りまくる。

 美術館作品のオープニングが完成。ムゼオ・ダルテ・ジブリのマークにもなっている通称ムゼオ虫が、かわいく動き回っている。短い物だが、楽しく見応えのある物に仕上がった。


5月20日(土)
 最近、作画のパーテーションに、社員の似顔絵を貼るという流行が起き、静かな盛り上がりを見せている。若い作画スタッフの似顔絵が多く(面白おかしく描きやすいからであろうと推測される)、特に「金賞」と貼られた米林氏による作画某氏の似顔絵は絶品。

 美術館作品二作品及び、オープニングのラッシュを行う。
5月22日(月)

 制作田中氏が久々に買ってきたお弁当(焼き肉、フライとかなりヘビー)をネタに、宮崎監督と鈴木プロデューサーが「奥さんに濃い味の物を食べさせてもらってないに違いない」などと、本人が打ち合わせでいなくなったことをいいことに好き勝手に盛り上がる。


5月23日(火)
 音響効果のスタッフから、美術館作品のライカリールに動きの判りづらい点があると連絡が入る。よりよい状態で効果を入れてもらうためにも、必要カットの優先順位をつけて、作監以降なるべくそれに準じてもらえるよう決める。


5月24日(水)
 友人の作った作品がアヌシーアニメーションフェスティバルのコンペに入り、その音楽を担当した野見さんが、プラハでの録音のついでにアヌシーへ行くことに。ところがホテルがどこも満室のため途方にくれている。

 音響の作業に合わせて、美術館作品のリーダーの間に、黒みををどういれるか検討する。


5月25日(木)
 宮崎監督に言われていた扇風機を買出しに行く。「ディスカウントで買わない事。日本製で有名メーカーである事」と条件を出されていた為、「日本製」とシールの貼ってある扇風機をわざわざ購入。これ見よがしに渡す。余談だが、某○○氏は、ハンド型のミキサーをテレビの通販で買うも買って数分で故障、そして返品。今日扇風機を買ったお店で、有名メーカー品が更に安い値で売られていた為かなりのショックを受けていた。合掌・・・。

 大量のフリスクが、差し入れされる。美術館作品の追い込みに合わせた訳ではないのだろうが、フリスクの味は、ふと「山田くん」の追い込みを思い起こさせる。


5月26日(金)
 先日亡くなられたアニメーターの小松原さんをしのぶ追悼上映のお知らせが、ジブリにも届く。企画はアニドウフィルム、場所は阿佐ヶ谷のラピュタ阿佐ヶ谷にて、6月20日から25日まで。同時に原画展も開催される。

 デジカメが近い内にメンテナンスにはいることが決定。その前にできるだけBGを取り込む必要がある。


5月29日(月)
 美術武重さんが、突如丸坊主で出社。

 撮影高橋氏が1年前から予約していた、完全変形○ッターロボのガレージキットが手元到着。三機の○ットマシーンが合体するという常軌を逸した内容に、キットを見た多くの人が呆然とする。ちなみに値段は約5万円。

 今日、「千と千尋の神隠し」の定例の作業グラフをつける。気が付くとあっという間に制作予定線に近づき来週あたりは、レッドゾーンに突入かという状況。嗚呼、短い春だったと神村氏は溜息一つ・・・。


5月30日(火)
 二階の天窓が開いた状態で、屋上庭園のスプリンクラーが作動。運悪く下にいた作画山森氏のラジカセが水浸し。本人曰く「原画でなくてよかった。」とのこと。


5月31日(水)
 上條恒彦さんがバイオリニストの方とともに、二馬力に来社。宮崎さんを始め、二馬力のスタッフは、ストラディバリウスの演奏に、上條さんの歌と、贅沢な一時を過ごした。