1999年12月

12月1日(水)
 社内紹介のページが見づらいという意見を受けて再び改造に着手。写真も含め近日中に改訂の予定。また質問コーナーも新しくすべく作業中。

 久しぶりにジブリ講演会を行う事になり、企画資料部佐々木さんがリストアップ、第一回を二月頃に実施すべく現在交渉中。

 神村氏が昨日から泊り込みでもう一度スケジュールの見直しをするが、どうやっても何段階に分けて動画を終わらせないといけないような状況である事に改めて気付く。昼過ぎに最終スケジュール案として高橋さんに提出。

 宮崎さんから発注しているコンテ用紙の再催促があり明日にナカザワに早急に持ってくる様お願いをせねば。


12月2日(木)
 割と近所に住んでいる来年の新人二人がいろいろな質問をしに来社。帰りに駅前の不動産屋で部屋を探して帰るという。


12月3(金)
 試写室で、美術館用スピーカーのテストを実施するため、スピーカーの組み立てが始まる。でかい。

 神村、居村両氏が、美術館用作品の一本をお願いするため、原画の○○さんと会う。12月15日作打ち予定。


12月4日(土)
 7時半より久しぶりの企画検討会が行われる。レポーターは宮崎監督。前回と比べて演助も含め新人達が増えた事もあり、活発な議論が繰り広げられる。二時間半では足りず、不満を漏らす人もでる。

 美術館作品の今後のラッシュチェックの仕方について、週一回で良いのではないかとの意見が出される。


12月6日(月)
 奥田さんとともに日本テレビの福島局長等が、お土産のお菓子を大量にもって来社。

 会社の前にジブリのキャラクターを似せて作った車に乗ってファンが乗りつける。総務石迫さんが対応。

 朝の打ち合わせや会議に出たあと、宮崎監督が次作の絵コンテに専念するため、信州の山小屋へ出発する。1週間ほどで帰って来る予定。

 「チョコエッグ日本の動物コレクション2」が発売されたと聞いて、昼休みに何人もが近くのコンビニに駆けつけるも既に売り切れ。店員によれば「みんなまとめ買いをしてしまったので」とのこと。買ったのはほとんどジブリとの噂も。


12月7日(火)
 昨日演助高橋氏が自転車でアパートのある下北沢まで帰る途中、三鷹付近でパンク、早速修理キットで補修するも、いい加減だったのか吉祥寺を過ぎた辺りで、再び空気が抜け始める。キット内の接着剤がもう無かったため、ドンキホーテにたちよりボンドを買うもパッチを剥がすときチューブを引き裂いてしまい万事休す。残り8キロを押して帰り着いたのが朝4時。教訓、予備チューブを持ち歩こう。

 本日より○○の美監平原さんによる背景のレタッチが始まる。基本的に全カットをチェックする予定。


12月8日(水)
 ○○○について、水中色テストを行う。結果は水中色の時にハイライトをつけない事になる。また影色のぼかし処理は実施する事に。懸案となっていたラッシュチェックは、18日に向けて現在4カット作業中。

 来年の社員旅行について近ツリの佐々木さんと打ち合わせ。宮崎監督の提案でへんてこりんな社員旅行になりそう。といっても実施するのは遥か来年の秋。


12月9日(木)
 11時より連絡会議が行われる。宮崎監督の次回作の概要や「もののけ姫」のアメリカ公開、美術館について約1時間にわたり鈴木さんから報告が行われる。

 CG部では、機材を一部入れ替える目的に、床に設置された配線のふたを一部掘り起こした状態になっているため、床が落とし穴のようになっている。


12月10日(金)
 コンピューター上での撮影作業が本格化してきたため、2stの古城君の机の近くに撮影上がりのカット棚が設置される。また年末ギリギリで、1stとのネットワークも完成する予定。

 東宝や徳間、メイジャーの人たちを集め、試写室にて吹き替え字幕版「もののけ姫」がテスト試写される。久しぶりに「もののけ姫」を見たのだが(といっても前半の2ロール程)字幕によって非常に分かりやすくなっている部分や面白い翻訳、またその翻訳の字幕等面白く見られる部分が多く、実に新鮮。

 神村、稲城両氏が昨夜ばらした美術館用の音響システムを共進倉庫に持って行く。

 昨日HPくろねこ亭の作者が来社。誰なのか一時議論になっていたが「バニー」のスタッフが来社した時に通訳をしていただいた人でした。


12月11日(土)
 古城氏が2stで、○○○の撮影作業に入ろうとしたところ、ハードディスクの容量が足りず、一部のデータを削除しないとレンダリングが出来ないことが発覚、シートとD1サイズのデータを一スタのサーバーにコピーした後、レンダリング作業開始。

 試写室の35ミリ映写機&プロジェクターを操作できる人間が古城氏しかいないため、試写の度に古城氏が呼びだされ、仕事にならなくなってきたので、演助制作陣がすべて操作できるように勉強することとなる。


12月13日(月)
 東宝パーティにおいて宮崎監督の次作「千と千尋の神隠し」(仮題)の制作が公表される。現在宮崎監督の絵コンテ作業等が快調に進行中。ちなみに昨日まで山小屋で絵コンテに集中していた宮崎監督が本日よりジブリに復帰するも、いない間にいろいろな問題が山積し、会議につぐ会議で仕事にならず。

 ところで発表ではタイトルが「千と千尋の神隠し」となっているが、実際はまだ決定してはいない。実は「もののけ姫」の時と同様に「千と千尋の神隠し」を主張する宮崎監督と「千の神隠し」の方が良いとする鈴木プロデューサーが攻防を繰り広げているのだ。「もののけ姫」の時は「アシタカせっ記」を主張する宮崎監督を退け鈴木プロデューサーが勝利を収めたが、果たして今回はどっちが勝つのだろう。

 今のところ発表出来る「千と千尋の神隠し」(仮題)の資料はこれだけなのでご容赦を。


12月14日(火)
 美術館用作品の色テストのラッシュが試写室で行われる。あっという間に終了。結果として色みの彩度を上げることになる。ところで今までの作品では、イマジカまで片道電車で一時間をかけて色テストを見に行っていたのだが、試写室ができてずいぶんと時間の短縮になっている。


12月15日(水)
 美術館用作品○○○の音楽を担当する野見祐二さんが来社。宮崎監督等と打ち合わせを行う。その後の雑談で「オケはチェコで録った方が上手い」という方向に話が進みそうになり、また2泊でチェコへ行くのか? と音楽制作の稲城氏は真っ青。

 スタッフ間に一般公募していた、「千と千尋の神隠し」(仮題)に登場する○○のキャラクターは、中途経過で5つが準採用となる。

 土曜日のラッシュチェックは今のところ9カットを予定。


12月16日(木)
 サーバーの停止とネットワークの新規接続の為、明日一杯で撮影作業は一時中断。再開は、28日の予定。来週は仕事が出来ないので、撮影部・仕上げ部・CG部で大掃除を繰り上げて実施する予定になっている。

 宮崎監督が、「千と千尋の神隠し」(仮題)のスタッフ構成について、責任体制を明確にした人員配置を実施すべく一覧図を作成しスタッフに提案。

 三週間も前から稲城、渡辺両氏が、一村氏を見習い武蔵境のフィットネス倶楽部へ行くと宣言していた問題で、ついに二人が入会を決意、さっそうと出かけていくもなんと定休日ですごすご帰ってくる。「いやー定休日だもんなー」と言い訳をしている渡辺氏だったが、そこに通りかかった一村氏に「木曜日定休日だって教えたじゃない」とばらされ、制作一同に、稲城氏ともども最初から行く気が無かったのか、と白い目で見られている。


12月17日(金)
 明日のラッシュチェックは、9カットで決定、古城氏の○○○の年内撮影作業は、本日で一旦終了。

 午後から試写室にて、制作、演助を集めてプロジェクターの講習会が行われる。今週末から始まるラッシュに備えてのものだが、使い方は意外に簡単。コンピューターからデジタルベーカムに落としたものを映写室にあるデッキにかけるだけ。便利なのは、映写室のデッキに一度テープを入れると、試写室内のコンソールでいろんな操作が出来るところ。でも試写室って音が全くしないので、音無しのラッシュを上映していると、音を立てないようにじっとしていなければならないので辛い。

12月18日(土)
 十一時半よりバーと会議室を使って年末恒例ジブリグッズ大バーゲンが行われる。毎年早く行かないと人気商品があっという間に売り切れることから、時間が近づくとみんな妙にそわそわ。開場と同時にどっと社員がなだれ込み、瞬時にほとんどの商品が売り切れ。ある人物は、仕事に集中していて、数分入場が遅れたため、ほとんど商品が手に入らず嘆いていた。

 二時半より美術館用作品初のプロジェクターラッシュが行われる。ようやく作品の感じが伝わってきた。それにしても相変わらずプロジェクターの性能は凄い。今までバーで行われてきたラッシュでは、上映装置の音がまる聞こえだったため、すぐプロジェクターかフィルムかが区別できたが、試写室では完全防音になっているので、絵で判断するしかなく、見ていた鈴木プロデューサーも途中で「あれ、これビデオなの?」と驚いていた。

 ラッシュのあと、もう一本の作品のCG処理カットテスト試写が行われる。

12月20日(月)
 本日よりサーバーが停止するため、撮影、仕上部が繰り上げて大掃除を始める。ブラインドを外して洗ったりする風景を眺めていると早くも年末の気配。

 宮崎監督が○○班のスタッフを会議室に集め、今後のジブリにおける人員配置とちょっと混乱していたアナログ・デジタルの境界線についての話を行う。現在制作中の各美術館用作品についても若干良い方向に変更が加えられることになる。ちなみに大忙しの宮崎監督は、ここ数日「千と千尋の神隠し」(仮題)の絵コンテ作業がさっぱり進まず頭を抱えている。


12月21日(火)
 秋の社員旅行の際、「一村教授行くところ定休日あり」の伝説を作った一村氏だが、今日も一緒に昼食に出かけたところ、三軒続けて定休日が続き、伝説の恐ろしさを見せつけられる。

 男鹿さんが二馬力に来社。美術館用の素材について打ち合わせが行われる。


12月22日(水)
 石迫さんと忘年会の打ち合わせをする。今回は場所も居酒屋で、大々的なこともできないし、たまには飲んだり食ったりしながら、みんなで語り合おう。との方向に決まる。

 某社から「○○△△」の動画をとったところ、キャラクターがどっかで見たことのあるようなキャラ。「これ○○に似てるな」とキャラ表を見ていたら、端にFAX番号と○○○と名前が書いてある。制作一同「え~」と驚きの声。自転車乗ってる場合ではない・・・。

 夜、最近仕事になっていないとぼやいていた宮崎監督が、再び絵コンテに専念するため、信州の山小屋へ出発。来週の月曜日に戻ってくる予定。ちなみにそれまでに絵コンテを○十枚描いてくると約束。


12月24日(金)
 クリスマスイブということで夕方に会社からケーキが支給される。クリスマスツリーを飾り、ロウソクの明かりだけのバーにケーキが並べられる。ついでにお歳暮で送られてきたビールやワイン、日本酒も配られるが、こちらは持ち帰り専用。が、美術部では飲んでいたものが数名いたとの噂。

 昨日居村氏がタカアシガニとヒラメの映像資料を入手すべく品川水族館に出向く。家族連れでいっぱいの水族館の一角で、なかなか動かないタカアシガニに我慢強くカメラを向ける居村氏はかなり怪しい人物に見えたはず。子供たちも避けて通っていたとか。そのかいあってか、なぜか動くタカアシガニを撮っているとヒラメ(実はカレイだったらしい)が画面の中に現れる幸運に恵まれ、良い映像が撮れる。


12月27日(月)
 2スタにいる新人星野さんの机の上で顔の描いたミカンが発見される。休み中の犯行と見られているが、本人の必死の捜査のかいもなく、犯人はいまだ不明、早くも迷宮入りがささやかれている。

 神村氏と忘年会の景品の買いだしに出かけるも、安い商品をたくさん買うというコンセプトは言うのは簡単だが、集めるのは実に疲れる。二人ともくたくたになって帰社。

 宮崎監督が山小屋から直接出社。すぐに二馬力にて井上直久さんと会う。


12月28日(火)
 試写室にて第二回のフィルムチェックが行われる。

 夜、金魚鉢にて恒例になりつつあるチーズフォンデュパーティが行われる。制作部を中心に、夕食代わりにするもの、つまみに来るもの入れ替わり立ち替わり。宮崎監督もなんだかんだ言いつつも美味そうに食べていた。


12月29日(水)
 今日は朝から大掃除。蛍光灯やブラインド、エアコンフィルターまで、全て外してきれいにする。何となく部屋が明るくなった気がする。机も掃除したので気分も良い。ちなみに宮崎監督は掃除の騒がしさを逃れ、二馬力で絵コンテ作業を続けている。

 5時から隣駅の居酒屋十他素にて忘年会。今回は食う、話すを主に、地味に行う。徳間社長も出席予定。