1999年11月
11月1日(月)
制作斎藤氏かぜでダウン。
朝一番に制作会議が行われる。原画が2ヶ月たったにもかかわらず思うように上がっていない。神村氏が状況を各原画マンに一人一人聞きつつ対策を練っている。
宮崎監督が所用で今日から山小屋へ。
夜に試写室にて「ターザン」の試写会が行われる。なかなか好評。特にターザンを描いているグレン・キーン氏の上手さに感心している人が多かった。4日に来社する予定になっているが、いろいろ質問を考えている人多数。
11月2日(火)
神村氏、現状の確認の為、各班の演出に状況を説明して意見を聞く。
夕食に出かけようと、小雨の中、居村氏運転するシャレードで出かけたところ、ワイパーを動かした途端、汚れた窓で前が見えなくなり、気づいたときには前に停車していたバイクに追突してしまう。幸いスピードはそんなに出ていなかったので、物損事故のみですんだが、こちらが全面的に悪いので、ひたすら謝る。もちろんバイクの修理代はこちら持ち。洗車を含め、日ごろの車の整備を痛感。
11月4日(木)
みんな楽しみにしていたグレン・キーン氏の来社が、飛行機の遅れによりキャンセルとなる。「ターザン」に感動し、盛り上がっていた某新人は、がっくりと思わずその場にへたり込んでいた。質問をいろいろ考えていた私もがっくり。
東小金井駅前に食料品も売っている99円ショップがオープンする。夕方早速言ってみるが、レジ前に長い列ができている。店の前で観察してみると、駅から降りてきた人の半分以上は店に吸い込まれていく盛況ぶり。いかに東小金井に店屋が無かったかの証明か。
11月5日(金)
動画インについて、神村氏を中心に念入りな打ち合わせが行われる。
夜8時頃グレン・キーン氏が来社。宮崎監督も交え、ジブリスタッフ50人以上がバーに集まり、1時間半にも及ぶ大講演&質問会となる。こちらの難しい質問にも真摯に答えてくれたキーン氏に一同大感激。その後スタジオ見学もして、結局帰ったのは10時半過ぎ。お疲れさまでした。
ジブリ新人スタッフと記念撮影をするキーン氏
11月6日(土)
○○○の背景UPが50%をこえる。ちなみに原画はまだ10パーセント行っていない・・・。
宮崎監督が二年分の新人を二馬力に集め、今のアニメ界とジブリの現状を説明する会を行う。
11月8日(月)
11時より会議室にて、宮崎監督次回作についての、メインスタッフ向け説明会が行われる。
美術館用作品○○の雨テストが終了。
制作斎藤氏が夕方三鷹へ用事で行ったのだが、夕食を買いに近くのスーパーへ寄ったところ、そこでハイジを見て以来憧れていたチーズフォンデュ(レンジでチン)を発見、早速購入しジブリに持ち帰る。制作居村氏がパンやブロッコリーなどを調達、深夜制作部でチーズフォンデュを食べまくる。
11月9日(火)
昨日のチーズフォンデュに味を占め、今度は神村氏が同じスーパーでチーズを買ってくる。またしても深夜チーズフォンデュパーティ。
美術館作品の一本が来週動画INの為、その準備が急ピッチで進んでいる。また既に動画インしている○○は、ゆっくり(トホホ…)ではあるが確実に上がっている。
○○さんより美術館の一作品の原画に参加してくれる、とTELあり。
美術館用作品のオーディションが試写室で行われる。もうすぐパパになる居村氏も出演か。
11月10日(水)
夜、試写室にて35ミリでの「セロ弾きのゴーシュ」上映会が行われる。これはアニドウでDVD化されるのを記念して(?)行われたもの。初めて大画面で見て感動していたスタッフ多数。
深夜、「くろ○こ亭」のHPが実によくできているので、誰が作っているのか、インターナショナルの武田さんも含め大議論となる。候補は何人かいるのだが・・・。
テレセンの井上さんが打ち合わせに来社。
予告無しの防災訓練が行われる。今年は発煙筒もたかれ、建物に対する放水も行われる。
11月11日(木)
日本シリーズのダイエー優勝を予想した、制作田中、演助奥村を讚えて近くの沖縄料理屋海風で飲み会が行われる。ちなみに宮崎監督は負け組として、飲み代をカンパ。
11月12日(金)
全社員がバーに集まり宮崎監督長編次回作の説明会が行われる。宮崎監督がホワイトボードを前に約一時間にわたり熱弁を振るう。内容は秘密だが、非常に面白そう。明日準備室を移動予定。
来月より三年ぶりに企画検討会が復活することに。
11月13日(土)
演助高橋氏と共に、スタジオ案内のページを刷新すべく悪戦苦闘中。それにしても随分変わったな~。
朝一から次回作の準備室を今ある日当たりの悪い場所から、バーへの階段上に移動。しかしここからだと制作部が丸見えで、いごごち悪し。
鈴木さんによる、新人向けレクチャーが行われる。内容は映画業界について。話が面白そうだったので、新人以外の人も多数参加。
稲城さん等が、試写室で○○のオーディションテープを試聴。
11月15日(月)
準備室に移動した宮崎監督だが、あまりの狭さに制作側へ机を約20センチ移動。多少は広くなる。が間の通路は狭くなる。
制作部の緊張感が足りないのではないか、とデスク神村氏から意見が出る。緊張感の無さは作画にも当然影響が出るので、朝早出のローテーションを組み喝を入れることに。
事故で工場入りしていたシャレードが復帰。
宮崎監督が美術館三作品用に集めたオーディションテープを聞いて、第一候補の選出。
11月16日(火)
美術館作品一本の背景作業がほぼ終了する。背景スタッフは、美監の平原さんを残して2スタから撤退、一スタへ。
新作長編班に入った武重さんが本格的に美術ボードの作業に入る。
昨日宮崎さんから「ひなげし」の花を買うことを命ぜられた斎藤君が、早速花屋へ行くも、今はまだシーズンではなく、花自体が市場に出ていない事が判明。
神村氏が、アメリカでもらってきた宮崎さんの重いティファニーの灰皿に対抗して(?)南部鉄のいろりを模した重い灰皿を購入。
資料用に「日本の食生活」全集を購入。これは県別に人々が何を食べてきたかをまとめた本で、スタッフはそれぞれ自分の出身県の本を手に取り故郷の思い出に耽っていた。
11月17日(水)
宮崎監督が「北海道の食生活」を見ていたところ、赤青白三色のなるとを発見、「正月に田舎に帰ったら買ってこい」と指示が出る。でも三色のなるとってどこにでも売っているものじゃないのかな?
夜、試写室にて新人達に「太陽の王子ホルスの大冒険」のビデオを見せる。見たことが無い人が結構いたため、教育の意味も込めてみんなに見てもらったもの。
寒くなってきたので久しぶりに近くの団子屋で熱々のおやきと団子を買って制作部に振る舞う。
11月18日(木)
今日から宮崎監督が本格的に絵コンテ作業を開始。本当は昨日からやっていたようだが、昨日描いた分は全て描き直すことになったらしい。
デジタルに対応したシートを作るべく、各スタジオからシートをもらってきて検討中だが、ほとんどが10枚以上の重ねに対応し3秒シートになっている。
11月19日(金)
美術館用に作っている、横3メートルもあるセルのマシンがけを行う。村尾さんとデュプロの社長山本氏が、新型試作マシンを持って来社、制作総出の作業となる。このデュプロが開発中のマシンは一台でスタンダードにも大判にも対応できる、実に画期的なマシン。スタイルも色も今までのマシンとは比べ物にならないほどスタイリッシュ。ああ、これが「もののけ」の時にあったら・・・
机を三つ並べて制作総出で作業。こんなセルも最初で最後か。
11月20日(土)
今日も村尾さんが来社し、大判セル作業の続き。新型マシンのおかげで思いの外早く作業が終了する。
夜、二馬力にて新人に対する講演第三回が行われる。内容はアニメーション界の現状とジブリの進む道について。三週続けて行われてきたレクチャーも今日で最終日。
11月22日(月)
深夜10時半頃、某動画マンがQARの下にある床電源を蹴ってしまい、電源がショート。二階の作画、制作ルームが真っ暗となる。幸い警備会社の人がすぐ来てくれて約20分後復旧。蹴った某動画マンは、えらく落ち込んでいた。ところで午後に起きた、多摩地区ほとんどが停電した事件は、なぜか小金井だけ停電せず、みんな家に帰るまで知らなかったとか。
美術館用のスピーカーの試作品が完成し、二馬力で披露される。
11月24日(水)
望月さん体調不良の為お休み。
ナカザワに新しいコンテ用紙とデジタル用の3秒シート発注する。
美術館作品の一本でラッシュチェックもしていないのにBGリテークがでる。これからどうなることやら・・・トホホ
資料写真を撮りにJR尾久客車区へ。カメラ二台で写真を撮りまくる。それにしても○○○の車両は凄い。
11月25日(木)
美術館用作品三本の効果打ち合わせが行われる。まとめてやった為かなり時間がかかる。その後神村氏は鈴木プロデューサーらとスケジュールの打ち合わせを行い、ついでにお好み焼きを食べに出かける。鈴木プロデューサーの「へら」さばきが凄かったとか。
瀬山さん来社、ライカリールの為の準備作業が行われる。
11月26日(金)
美術館用作品の原画・作監が壊滅的に遅れている。今後の対策を月曜日までにまとめる予定。
企画検討会の本の貸出しが一段落ついているが、作画部門からの貸出し希望が少ない。美術館作品の仕事が遅れているためか。
11月27日(土)
第二スタジオのメインスタッフから新人の面倒を見る制度について、見直しの意見が出される。
演助高橋氏と作っていた社内案内のページを更新する。
11月28日(日)
商品部浅野氏と広報長沢嬢との結婚式が立川で、その後二次会が吉祥寺で開かれる。多数のジブリスタッフが参加。う~ん結婚ラッシュ。
11月29日(月)
朝の制作会議で、神村氏が何とか遅れを巻き返すため、各作品担当の制作に今後の指示を伝え喝を入れる。
夕方宮崎監督が作画スタッフをバーに集め、例の新人の面倒を見る制度について、今後の方向性を伝える。
11月30日(火)
一カット数百枚のカット連発で、なかなか上がらない美術館用三作品に対する緊急制作会議が開かれる。
神村氏が何人かの原画マンに声をかけているがなかなか忙しくて良い返事が得られていない。