1999年10月
10月1日(金)
制作の居村氏のMacが壊れ、数ヶ月間パソコン無しの状態が続いていたが、今日漸くMacが用意された。しかし、何故か前のMac同様お下がり。「どうせ制作部は・・・」と居村氏はいじけている。
昨日に引き続き寄せ書きが社内を回っているが、仕事がら鉛筆をよく使う為真っ白だったシャツが段々薄汚れてきている(新品を買ったんだけど・・・)。
10月2日(土)
例の寄せ書きTシャツがほぼ完成。最後に宮崎監督が襟等に装飾を施している。
美術館作品用の波テストがOKとなる。
10月4日(月)
制作の有志が集まり、東小金井の飲み屋にて、門屋さんの送別会が行われる。もちろん門屋さんは例のシャツを着て参加。
今年は10日にツール・ド・信州が行われる予定であるが、新人から演助の奥村、作画の伊藤両名が参加する予定。当日に向け、毎朝トレーニングを積んでいるらしい。
記念のTシャツを着てご満悦の門屋氏
10月5日(火)
現在美術館用作品に取り組んでいるが、動画の仕事がまだ出ないため他社の仕事を取っている。そこで制作の斉藤氏が新人達を会議室に集め、どのような心構えで動画を描いていったら良いかをアドバイスする会議を行う。
10月6日(水)
日曜日に行われる作画二次試験の、ポスターやら何やらを作成。
作画スタッフから扇風機を欲しいと言われて近くの電気店数店をまわるが、やはり秋風が吹く季節になっている為、全然見当たらない。
山本さんが柊さんに会うため日帰りで北海道に出張。
百瀬さんと望月さんが東映アニメーションへ。
神村氏がトロトロに美術館の動画を御願いするので、斎藤くんと挨拶に行く。
10月7日(木)
瀬山編集の瀬山さん来社。今度の美術館用作品の編集作業をどのように進めていくか検討。
6時より試写室において、IGの石川社長、押井さん、沖浦監督らも来社し「人狼」試写会が行われる。とにかく大好評。上映後、試写を見た宮崎監督を含めたスタッフと押井さん等が懇談。また社内のあちこちでは興奮さめやらぬスタッフ達が深夜まで議論を重ねていた。ところで制作居村氏がさっそくカット袋で通称「ジバック」を作成、あちこちで披露している。
人狼を見ないとこの意味は分かりません…公開したら見に行きましょう
10月8日(金)
倉庫を整理するつもりだったが、出版部で「山田くん」の本を出す為、動画がちょくちょく必要、とのことなので週明けに行う事にする。
神村氏が「山田くん」のデーターを整理する為、ジブリ日誌を見直しているが、懐かしい為か、仕事そっちのけで読みふけっている。
スケジュールが押し気味の美術館3作品だが、背景のみ順調に上がってきている。
10月9日(土)
明日の作画研修生実技試験に向け、机や筆記用具の準備を行うが、ジブリ内のいくつかのコーナーに固めて席を準備しようとしたところ、あまりに持ち物が多く片付けられない動画机が続出、結局席がばらばらとなる。人のことは言えないが私物多し・・・。
10月10日(日)
来年度の作画研修生選考実技試験が行われる。5人が選考を通過。あとは宮崎監督、鈴木プロデューサーによる最終面接を残すのみ。
というわけで、今年は面接官として試験に立ち会った稲村氏と共にツール・ド・信州は欠席。今年のツールは、野崎氏がどこまで帝王高坂氏に迫れるかが注目の的であったが、野崎氏は信濃境へ向かう最後の坂道の手前まで高坂氏をリードしておきながら、道を間違えて諏訪湖方面へ向かってしまい、優勝はパー。結局高坂氏が昨年のタイムをさらに縮めて優勝を飾る。
10月12日(火)
制作総出で制作部倉庫、特に山田くん原画の整理。夜10時までかかる。改めて、原画の量の多さに驚く。
防災訓練の打合せがある。
社員旅行宴会委員会が行われる。
稲城さん遅めの夏休みが終わり出勤するも、風邪の為元気がない。
朝定例の制作会議。原画が予想通りに遅れている事を再確認。今月は、月末に社員旅行がある為、各班確実に上げて行かないと大変な事になりそう。ただ各班ある程度テストが済んでいるので、作画に入って困る事には余りなりそうにないのが救い。
10月13日(水)
昨晩神村氏が最後になったため、建物全ての鍵をチェックして帰宅したところ、制作斉藤君の携帯から緊急の電話が入る。なんと神村氏が、屋上で携帯電話をかけていた斉藤君を見逃して全てに鍵をかけてしまったのだ。急遽神村氏がジブリに引き返し事無きを得るが、携帯がなければいまごろ寒空の中一夜を・・・。携帯は嫌いな私だがこういう利点もあるなーと感心。
神村氏、稲城氏と、美術館作品のアフレコとダビングの日にちをどうするか相談。
神村氏、居村氏と山本さんが一緒にコクピットに動画の件でお願いに伺う。
10月14日(木)
試写室にて、CG部片塰、泉津井両氏の主催により、山田くんで使われたCGの技術を解き明かす説明会が行われる。ほぼ全員が参加。
美術館用作品一本色指定がおおまかに決定する(細部はまだ)。
10月15日(金)
制作部は日曜日に行われる仕上、美術の二次試験の準備に追われる。
10月16日(土)
今日で、○○以外の作品は、レイアウトが終了予定のはずだが終わらず。
○○○○の背景をデジカメで撮りこんだが、何故か赤い斑点が・・・もう一度撮りなおす事に。
制作居村くんが「母親教室」奥さんと参加。人形ではあるがおしめ交換と入浴の仕方を教わる。なんでも入浴の際、ギャグを飛ばして講師の人に怒られたとか。
10月17日(日)
来年度の仕上、美術の二次試験、面接が行われる。
10月18日(月)
定例の制作会議が行われる。スケジュールの遅れをどうするか、各班に話し合ってもらう事に。
○○さんに美術館用一本の原画をお願いするため電話。返事は今度ジブリに来た時にするとの事。宮崎さんと一緒に攻め落とさなくては・・・。
古城氏と神村氏が試写室の入り口に立てる「上映中」看板を、既製品では高いので自作しようと、近くのディスカウントショップに材料を揃えに行く。完成品は意外と好評。
10月19日(火)
神村氏と某所で行われる宴会の景品を購入するため、近くのディスカウントショップへ。
深夜、三作品の原画問題で深夜まで話し合いが行われる。
先日の新人募集、仕上、美術部門二次試験の通過者は、仕上部門の一名のみとなる。
10月20日(水)
朝から制作陣が集まり再び原画問題の話し合いが行われる。スケジュールがひたすら厳しい。
今まで絵が描けることをひたすら隠していた一村教授が居村氏の似顔絵にこっていて、1枚描いてはわざわざ本人に提出している。
最近ジブリでは、チョコのなかにカメ、てん、カエル等々の人形が入っている「チョコエッグ 日本の動物コレクション」集めがはやっている。10月末に発売予定の第二段を首を長くして待っている者多数。
10月21日(木)
神村氏が風邪でダウン。宴会の準備は大丈夫か。
近ツリ佐々木氏来社、月曜日から始まる社員旅行の切符を受け取る。すぐに社員に配付。
10月22日(金)
社員旅行用の景品を向こうの旅館に発送。何年かぶりで行われる宴会にて、宴会芸を披露する今年の新人達もこそこそ衣装を送っている。
10月23日(土)
12時より来年度仕上部門研修生最終面接が行われる。結果男性一人が合格する。続いて作画部門の最終面接が行われ、男性二人、女性三人の計五人が合格する。来年4月より9ヶ月間の研修に入る。ところで今回二人の合格者の中に北海道出身者が二人も交じっていたため、北海道出身の某氏は「これで北海道派閥の力が増すぜ」と喜んでいる。
社員旅行前に手持ちの区切りをつけるため、朝方まで作業するもの多数。
10月25日(月)
今日から京都へ二泊三日の社員旅行。基本的に自由行動のため、京都駅にてそれぞれ目的地へと散っていった。
10月26日(火)
本日も京都。
10月27日(水)
京都から帰京、明日から美術館用作品のラストスパート。
10月28日(木)
宮崎監督が、休み中にアビッドコーナーにあったパーテーションが無くなり、見晴らしが良くなった制作横のスペースを見て、周りにある棚等の位置変更を指示。そこに次作長編のメインスタッフルームを作るとのこと。
社員旅行へ行かなかった居村氏の元へ続々とお土産が届くが、そのどれもが京都とは関係のない面白グッズばかり。
○○○のテスト終了。基本的にこのテストを基に作画して行く予定。
一方○○の方は、何とか予定通りに動画インが出来そうな感じになってきた。
10月29日(金)
動画INに向け、各作品のプロデューサーが集まり、進行具合の確認。
今日の日付からアメリカで「もののけ姫」英語版がようやく公開される。アメリカ人があの映画をどう見るのか興味津々。