2003年9月

9月1日(月)
 社内原画が手空きになった為、早速作打ち。予定していましたが、これで又、コンテの残りカットが・・・。

 制作の入り口に、2月頃から置かれていた、ミスコピー等のゴミの山を片付ける。半年以上にわたり溜めてきたので、結構な量になる。

 一昨日檜原村へトレーニングに行った某グループの某野中氏が、帰りの多摩川サイクリングロード日野橋付近で転倒し、鎖骨を骨折して救急車で運ばれる。この場所、数ヶ月前石迫氏が転倒鎖骨骨折した場所のすぐ近く。日野橋の呪いか。


9月2日(火)
 「ハウル」も制作に入ってから半年以上が経つので、前作の「千尋」との比較をもう一度枚数まで出して確認してみる。思わず「あっ!」と言う様な数字が。うーん、これはイカン、イカンですよー。

 本日ジブリは歯科検診。この日ばかりは、みんな食事の後にきちんと歯を磨くが、制作の某氏は、磨くのが面倒なので、昼食をとらずにコーヒーで済ませている。そんな事でいいのか!!

 今日も話題の中心は骨折した野中氏。普通に出社してきているので、宮崎監督も「野中さんの運動神経に問題が…」と言いつつも、タイラー・ハミルトンを引き合いに出し、10月のアニメ版ツール・ド・信州出場を勧めている。


9月3日(水)
 本日も予定通りに社内の原画さんが手空きに、早速作打ち。あーコンテは、何時まで持つのか!!

 作画のピークの事を考えて、倉庫から作画机を1セット持ち出してくる。ジブリの場合、側机なるものが一緒にある為、一度に運び切れず炎天下の中、倉庫を2往復。取り敢えず設置して見るとまだ置けそうなので、明日もう2台運ぶ予定。しかし、今日は昼の暑さといい、夕方の大雨といい、本当に9月か?

 用事があったので夕方新橋に向かって出発するも、吉祥寺付近で大雨となり、高円寺で落雷のため中央線がストップ。先頭車両だったのでホームに出てみると都心方面には信じられないほどの数の稲妻が空を覆っている。一時見とれているも、時間が無いので、慌てて逆方面の電車に乗り荻窪で地下鉄に乗り換え、無事新橋へ。


9月4日(木)
 昨日に引き続き、倉庫から作画机を予定通り2セット運び出す。昨日と違い、運び出す数が多いため、倉庫を3往復。これで、もう他に机を置くスペースが無い。予定より人数が増える様な事態は、避けたいが今の所、全く予想すら出来ない。うーんどうしよう。
 以前に油抜きダイエットが終わったと書かれた制作渡辺氏、しかし本人はやはり体に気を使って極力油を避けていたようだが、今日の昼になんと「ステーキ」を食ったことが発覚。以前にもまして、「意気地なし。」と批判を浴びる。「とっても美味しかった。」と本人談。

 ツール・ド・信州の参加リストが社内を回っているが、覗いてみると、そこには野中さんの名前が。おおっ、男だ野中さん。


9月5日(金)
 今日、ジブリ恒例?の防災訓練が行われる。いつものように、ベルが鳴りみんな近くの公園へ一時避難。そして、バケツリレー&消火器を使った消化訓練。しかし、今回はいつもと違う。なんと起震車を使い地震を疑似体験。つい最近も大きな地震があっただけに、大変良い経験となる。因みに、制作の渡辺氏も体験したが、テーブルの下に体が入りきらず、頭かくしてなんとやら状態。「僕、体が硬いから。」と寂しい言い訳をしてましたが・・・。


9月6日(土)
 昨日の防災訓練に引き続き今日は、炊き出し。メニューは、「すいとん」「ホウトウ」「御飯」と「アルファー米」。朝から、釜をセットして、すべてのメニューを釜で作る。普段電気釜を使って御飯を炊いているので、かなり不安だったが、炊き上がった御飯は、焦げ付くことも無く非常に良い出来で大好評。只、「ホウトウ」の残りをチェックしていたら、鍋の底から麺についていた乾燥剤が袋ごと発掘される。おいおい。まあ隠し味ということで。

 来週月曜日が、「スタジオジブリ2004年度研修生・動画部門」の締め切りのため、今日から応募作品が大量に届く。前回から想像するに、月曜に届く量はこれをはるかに上回るはず。


9月8日(月)
 予想通り研修生の応募が山ほど届く。朝から、封筒を開けたり通し番号をつけたりと、管理部は大忙し。解っていた事だが、本当に大変そう。

 絵コンテのDパートが完成してから初めての制作会議。途中夏休みがあったり、お休みの人がいたりて、中々出来なかった。暫くぶりの制作会議だが、当然話は「コンテ」の状況と、各部署の進み具合の状況確認になる。「千尋」と比べると全体的に遅れはじめているので、皆今後の事を相談するも、「やはりコンテ完成しないと。」という事に。


9月9日(火)
 夏休み後、初のラッシュチェック。これでようやく100カットを超える。先は、まだまだ長い。

 「ハウル」の進行状況に、少しばかり問題が。鈴木プロデューサーを交えて、午後一で会議を行う。

 歳のせい(?)で、体力的にもろい、渡辺・神村の両氏。作画の人に勧められて、只今「にがり」を毎日少し飲んでいるのだが、さじ加減が難しく、入れすぎてお腹の調子が悪くなったりして、かえって悪くなっている様な気が。

 今日がツール(ツーリング)・ド・信州の参加申し込み締切日だ。集計してみたところ、ジブリチームだけで34名の参加となる。ひえ~っとサポート責任者の井上さんが青い顔をしている。特に練習不足がささやかれている美術館からの参加者が心配…。


9月10日(水)
 月初め定例のジブリミーティングが行われる。鈴木プロデューサーから「ハウル」の状況報告がある。内容は、解っていた事だが、あらためて言われると・・・。

 午前中の報告を受けて、制作は新たな予定表を作ることになる。下準備として、コンピューター上でのスケジュール表を作ったが、予想以上の角度のグラフに改めて驚く。


9月11日(木)
 2004年度の動画研修生の作品整理が無事終わり、まずはひと段落。しかしこれからが大変。提出された作品の書類選考を行わなければならないのだ。「ハウル」のきついスケジュールの中選考をお願いするのも制作として複雑な気分だが、なんとか宜しくお願いします。

 今週、原画は比較的順調に上がってきている。しかし、今までのパターンだと来週が落ち込むことになりそうな気が・・・。残りもう後半年。何とか頑張って欲しい。


9月13日(土)
 今週は、どうも動画の上がりがいまいち悪い。大変なカットにかかっているのか?そろそろ動画の増員もしないとまずいな。

 来週は、2004年度研修生の仕上げと美術の締め切りだ。作画の時、制作に届くはずの荷物がうっかり応募と間違われていた事があった。今回は間違わないようにしないと、整理の為に2,3日置きっぱなしになる可能性が。


9月16日(火)
 現在、制作の現場は神村・居村・斎藤の3氏で見ている。今日、居村・斎藤の両氏が同時に外回りに出たとたん、何故か急に電話や回収及びチェック等の仕事が同時におき、1人残った神村氏がバタバタ。普段はこんなに同時に起きないのだが。やはり休み明けはトラップが一杯だ。


9月17日(水)
 「ハウル」は、「千尋」と比較しても1cut当たりの平均枚数が多い。今日、アニメ業界で言うところの、「箱カット」が2つも上がってくる。枚数が上がるのは嬉しいが、この先のことを考えると恐ろしい。
 明日、2004年度研修生「仕上」「美術」の締め切りです。作画同様、駆け込み?応募が大量に来る。おかげで管理部は、大忙し。

 キャピタル東急ホテルにて東京国際映画祭の記者発表が行われる。約一時間半の発表が終わった後、特別ゲストのゴジラが・・・。約一名ジブリ広報部長が大喜びで写真を撮りまくっていた。


9月18日(木)
 制作には、緊急用に絵コンテのストックが常にあるのだが、最近各スタッフ等に頻繁に配っている為、まとめて大量に作る事にした。朝11時からコピーを始めたのだが、終わったのが夕方6時。コピー用紙ほぼ5箱分使ってしまった。がんばれ新型コピー機。

 今日で2004年度の研修生は、締め切り。思った通り駆け込み応募で管理部は、てんやわんや。最終的にどれくらい応募が来たのかは、未だ解らず。

 現代美術館に展示してあった制作資料が一気に返ってくる。ムービック森田氏らと汗だくになりながら整理。夏はエアコンの無い倉庫での作業は辛い・・・。


9月19日(金)
 本日は、?回目のラッシュチェック。約30カットを見たが、無事リテークも無く終了。ラッシュを見ながら「このペースで行くと、年内にどれくらいチェック出来るのだろう?」とか考えてしまう。うーんラッシュに集中せねば。

 注文していた動画用紙が届く。しかし、以前に間違えて注文した分もあるので、置き場所を作るまで、制作のカウンターの上に一時避難?

9月20日(土)
 今週動画が、作業に入って初めて週3000枚を超えました。しかし、それを上回るペースで作監が上がってきくるので、中々作監を追い詰めることが出来ない制作であった。来週こそは、なんとしても追い詰めたい。

 今日、2004年度の研修生の第一次書類審査を行いました。作画の応募総数は351人。14時から始めて、終わったのが17時。年々、絵のレベルが上がって来ていると思うのは、私だけか?

 遂に制作がりんごの皮むき機を購入。早速試しに1個剥いてみると、思わず「おー。」と言いたくなるくらい、綺麗にむける。しかし、セットするのが面倒なのか、その後もう1個剥いただけ。あぁ、駄目人間の集まりだー。

9月22日(月)
 今日から制作部に「千尋」の時手伝ってくれた伊藤君が出社。これで制作は、万全の体制へ? 早速、斎藤君が外回りの事や、備品の置き場、チェックの仕方等々を教えていたが、場所もシステムも変わってしまった為、以前の勘を取り戻すのはもう少し先か。

 またまた社内原画さんの手が空きそう。 休み明けにコンテを少しでも貰えるか! 乞う御期待。


9月24日(水)
 制作部待ちに待った絵コンテが、少しだけUP。早速作打ちを行うも、すべて打ち合わせて終了。あー次のコンテは、何時だろう…。

 今日も制作伊藤君は、斎藤君について外回り。「千尋」の時の外注さんが引越していたりする為、一から道を覚えなくてならない。


9月25日(木)
 制作伊藤君にとっての最大の難関、ハーモニー用「マシーンがけ」を斎藤君指導で行う。しかし、なんせ初めてだし、組線と違って線が細く細かく複雑と来ている。結局斎藤君がマシーンがけをして終了。

 渡辺・神村両氏が、夕食へ。神村氏の提案で「炒飯」に決定。お腹の減っていた渡辺氏は、迷い無く「大盛り」を注文し、負けじと神村氏も。出てきた「炒飯」は、予想以上の量が。食後、「食いすぎたー」と渡辺氏。神村氏は「どこが?」と未だ足りなそうな顔。


9月26日(金)
 本日定例のラッシュチェックが行われる。これで、150cutは超えました。今回はリテークも無くほっとするメインスタッフ。

 明日は、ジブリの月に一度の定休日。今週は、祭日があった為、実質4日の出勤。当たり前の事だが、中々制作の思うように数字が伸びない。こんな時、制作は精神的に焦ります。

 夜、渡辺氏が一村氏と夕食に出かける。戻って来た渡辺氏に制作全員が「何食べてきたんです?」と一斉に攻撃。自分の体、自分のお金なのに、何故か肩身の狭い思いをする渡辺氏。


9月29日(月)
 社内原画さんの手が空きそうな為、明日、早急に作打ちを決める。さらに、Dパート以降の処理打ち合わせも同時に決める。

 非常に不謹慎な事なのだが、ここ数週間地震が頻発している為、制作の渡辺氏と神村氏との間で「地震雲」なるものが盛り上がっている。ここ数日二人して空を見上げては、「あの雲は怪しい。」とか話し合っている。


9月30日(火)
 早いもので、今日でもう9月も終わり。「光陰矢のごとし」とは、よく言いますが本当に早い、早すぎる。本日も何とか無事に社内原画さんの作画打ち合わせとメインスタッフの処理打ち合わせを行いましたが、本編の先が未だ見えずじまいで・・・。後何回打ち合わせをすれば良いのだろう。時間だけが過ぎて行く・・・。

 例の如く制作居村氏が、グリコのおまけを目当てに、「大人買い」(一説には大人気ない買い方からだとか)。うーん家で娘は泣いてるよ。

 鎖骨骨折にもめげず、ツール出場を表明している野中氏だが、さすがにトレーニングをしないとまずいと思ったのか、近所のディスカウントショップでトレーニングマシンを購入、部屋の中で自転車こぎこぎをしている。ためしに「日曜日トレーニングしました?」と聞いてみたところ、「いや~6時間もこいでしまいました。ハハハ」との返事。雨の日など部屋の中でトレーニングする人を何人も知っているが、一日で6時間も乗りつづけた人は聞いたこともない。大体景色も変わらないところでペダルを漕ぐなど、そもそも拷問に近い。恐るべき忍耐力だ。ダークホースとなるのか。