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対談 亀渕昭信×大瀧詠一(4/6)日本人の琴線に触れるコードとは

亀渕:もうひとつ、僕が連載のテーマとしてひとつはずせないと思っていたのが、ニール・セダカのことなんだ。ニール・セダカってまだ「ロックンロールの殿堂」(※1)に入っていないんですよ。

大瀧:そうなんだ。ポール・アンカは?

亀渕:アンカも入っていない。ふたりとも日本ではすごい人気だったのに。

大瀧:日本のルーツは、アンカとセダカなんだね。でも、アメリカやイギリスでは、アンカもセダカも流行ったけど、ルーツではない。

亀渕:そう。ルーツではないから評価されない。でも、ニール・セダカってアルドンミュージック(※2)の最初のスターだと思うんだ。そういった意味では、もっとアメリカで評価されてもいい。ドン・カーシュナーやキャロル・キングといった周りの人たちはみんな入っているのにね。

大瀧:アンカとセダカは、日本ではベンチャーズと同じように評価が高い。日本のポップスへの影響はエルヴィス・プレスリーよりもアンカとセダカ。エルヴィスは一般的に人気があったことは確かだけど、ポップスも演歌も含めて音楽家への影響という意味合いでは、アンカとセダカのほうが大きい。エルヴィスも曲をカバーする人とか物真似する人は山のように出た。けれども、エルヴィスの楽曲を日本語のオリジナルにしようとする人はいなかったということなんだ。

亀渕:それはできなかったということ?

大瀧:いや、みんなトライしたの。もちろん僕もやったしその前にかまやつひろしさんがトライしている。かまやつさんと対談をしたときにいつも「C・F・Gだと大ヒットにならないんだよね」という話をして─。

亀渕:コードの話だね。

大瀧:ブルースコード。この3コードだけだと、ヒットにならないんだ。CとFとGの間にAマイナーが入るか入らないかが大きい。C・Aマイナー・F・Gで、そのAマイナーが入るか入らないかなんだ。アンカとセダカにはそれが入る。でも、エルヴィスのようにAマイナーを取ってC・F・Gだけでいくと、大ヒットにならないんだ、日本では。

亀渕:そのAマイナーが入ることによって日本人の琴線に触れる。

大瀧:もちろんエルヴィスにもAマイナーが入っているのもあるけど、基本は「ハウンド・ドッグ」とか「監獄ロック」とか、C・F・Gの3コード。マイナーコードが入るか入らないかというのは当時の日本人にとっては大きかった。

※1 1986年に始まった、グラミー賞などと並ぶアメリカ4大音楽賞のひとつ。The Rock and Roll Hall of Fame and Museumの名前の通り、オハイオ州に博物館が造られており、ロックに大きな功績を残した人を表彰し、記録、展示している。

※2 アル・ネヴィンスとドン・カーシュナーの2人が興した音楽出版社。作曲家を抱え多くのアーティストに楽曲を提供するというビジネスを行い、50年代から60年代にかけて大成功を収めた。