「野中くん発 ジブリだより」 9月号

 この文章の掲載号が配布されるのは9月10日。季節は秋のはずですが、ここ数年の傾向を考えると、残暑が厳しそうです。スタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」はまだまだ公開中。お陰様で幅広い世代の方から好評で、大変有難いことです。もし未見の方がいらしたら、どうかお近くの劇場でご覧下さい。

 さて、「マーニー」関連でいくつか展覧会が開かれていることはこれまでにも何度か書いてきました。両国の江戸東京博物館で開催中の「思い出のマーニー×種田陽平展」はいよいよ9月15日(月・祝)で終了ですが、もう1つ、同時開催の「ジブリの立体建造物展」は12月14日(日)まで、小金井公園にある江戸東京たてもの園で開催中。こちらも多くのお客さんにお越し頂いており、とても有難いことです。

 「思い出のマーニー」には「湿っ地屋敷」というとても印象的なお屋敷が登場します。物語の重要な舞台となる建物ですが、スタジオジブリ作品にはこれまで様々な建造物が登場してきました。こうした建造物に焦点を当てた展覧会がこの「ジブリの立体建造物展」。背景画や美術ボード、美術設定といった制作資料をふんだんに展示し、さらに、代表的な建造物をミニチュアの立体模型で表現して、その設計の魅力を探っています。採り上げる作品はジブリの出発点となった「風の谷のナウシカ」から最新作「マーニー」まで十数作品に及び、ジブリより前の「アルプスの少女ハイジ」も特別に登場。三鷹の森ジブリ美術館で以前行った企画展示で大好評だったアルプスの山のジオラマ模型を展示しています。展示の中心は絵ですが、「千と千尋の神隠し」の舞台となった湯屋・油屋は約3mの巨大模型を今回新たに制作しており、これがまたとても見応えがあります。監修を担当して下さったのは建築史家で建築家の藤森照信さん。専門家の視点でジブリ作品の建造物を解説して下さり、大変興味深い内容になっています。どうぞ皆様お越し下さい。

 会場である江戸東京たてもの園とジブリとは、約20年にわたるお付き合いがあります。藤森さんとジブリの出会いも、ジブリが編集したたてもの園の本がきっかけでしたが、今回、この本が『新 江戸東京たてもの園物語』としてリニューアルされました。こちらも藤森さんに全面協力いただいており、高畑・宮崎両監督と藤森さんの対談やジブリスタッフのイラストも収録。たてもの園で売っていますので、どうぞよろしく。