「野中くん発 ジブリだより」9月号

 今年は鴨長明が『方丈記』を執筆してから800年とのことで、ゆかりの地である京都の下鴨神社では『方丈記』800年記念「鴨長明『方丈記』と賀茂御祖神社式年遷宮資料展」という催しが10月1日(月)から始まりますが、その一環として、「『定家と長明』展 スタジオジブリが描く乱世。」が開催されます。

 このタイトルを聞いて、そういえば......と思い出す人もいらっしゃると思いますが、この「定家と長明」は、もともとは2008年に神奈川近代文学館で開かれた「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。」で展示された、架空のアニメーション映画企画の1つです。

 宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーは、若いころから作家・堀田善衞(1918〜1998)の大ファンでした。後には親交も生まれ、堀田さんが亡くなるまで交流は続きました。そうしたつながりがあったので、堀田さんの展示会が開かれることになったとき、展示の中でジブリ担当のパートが設けられ、「もしスタジオジブリが堀田さんの作品をアニメーション映画化したら」という発想のもと、架空のアニメーション映画の企画を作り絵で展示することとなりました。そして、宮崎吾朗監督が中心スタッフとなり、『方丈記私記』『定家明月記私抄』を原作とした「定家と長明」と、「路上の人」(同名作品が原作)の2つの企画が作られました。イメージボードとキャラクター設定を吾朗監督が、美術ボードを美術スタッフがそれぞれ多数描き、物語の世界を構築。その後、「堀田善衞展」は2010年に堀田さんの故郷・高岡市でも開催されました。

 そして今回、「定家と長明」のパートについて、題材が鴨長明と『方丈記』と深い関わりがあるということで下鴨神社よりご依頼があり、『方丈記』800年の記念すべき年に京都でこの展示が甦ることになったわけです。今回は下鴨神社内の重要文化財・神服殿で行われることが大きな特徴です。そのため、空間に合わせて和風の素材も使用し、展示スタイルを一新しています。空間プロデュースはジブリが手掛けました。

「定家と長明」の主人公は鴨長明と藤原定家。企画・監修の宮崎吾朗監督は、二人が青年だった頃に時代を設定し、彼らが何を見、何を考えたかを、堀田さんの乱世を見つめるまなざしを通して描きます。そして、私たちはどう生きるのかを問いかけます。

 開催は10月1日(月)より12月16日(日)まで。皆様、機会がありましたら、どうかご覧下さい。