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2006年4月28日
第八十一回 稲村さん、アレンを描く
明日、4月29日から
予告編第2弾が劇場で上映されます。
予告編を見てもらうとわかるのですが、
主人公アレンが必死の形相で目をむきます。
これは、これまでのジブリ作品にはいなかったキャラクターです。
これを提案し描いてくれたのが、稲村さんでした。
作画監督の稲村さんは無口で、真面目な人です。
集中しているときの稲村さんは、
近づきがたいオーラを背中から発しています。
時々、私にもいい笑顔を見せてくれるのですが、
なかなかその機会はありません。
映画「ゲド戦記」の主人公アレンは、
一見、何を考えているのか理解しづらい少年です。
そのアレンの複雑な心を、
目に見える表情に映していったのが稲村さんなのです。
いよいよ制作に入ろうという時期に、
普段あまり口を開かない稲村さんが
「このアレンという少年がわからない」と
強く言ってきたことがあります。
「この少年がどういう少年なのか理解できないと、
僕は描くことはできない」と。
その時、初めて稲村さんとずいぶん話をしました。
それっきり、稲村さんは僕に向かってその話はしなくなりましたが、
原画マンとの作画打合せのときの稲村さんの表情を見ていると、
私の説明の中からヒントを掴もうとしている様子が良くわかりました。
そして、時には「アレンはこういう子だから」
と言ってくれるようにもなりました。
アレンは、稲村さんがいたからこそ生まれたと言っても
言い過ぎではないと思うのです。