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2006年4月24日

第七十七回 監督であること

先週末に、監督として初めて、
まとまった時間をとって本格的な取材を受けました。
そして、取材を受けながら、時に苦しい気分になりました。

なにしろ、まだ映画は完成しておらず、
自分が何をしているのか、何をやろうとしているのかを
うまく整理しきれていない状態なので、
なかなか確信をもって話すことができないのです。
以前就いていた仕事についてであれば、
それなりの経験もあって、
もっと違ったふうに話すこともできるのですが、
そうはいかないところに、
あらためて自分は新人なのだと感じました。

制作も終盤に差し掛かり、完成が見えてくるとともに、
逆に悩むことが多くなりました。
始まった頃は、考えなければいけないこと、
やらなければならないことが山のようにあって、
毎日が発見の連続でした。
なんとか目標を達成するのだという意気込みがあり、
それこそ勢いに身をまかせて、
流れの中を無我夢中に泳いでいるといった感じでした。

それが、年が明けてレイアウトを描く作業が一段落して、
自分自身で手を動かすことが少なくなり、
それとともに待ち時間が多くなり、
その一方で、少しずつ専門的、技術的なこともわかってきて、
今の自分ができることの限界を、
思い知らされるようになりました。

そして、
完成した画面が積みあがっていくにしたがって、
自分は最善を尽くしているのだろうか、
高い質の作品を実現し
多くの人の期待に応えているのだろうかと、
不安に襲われることが多くなっていきました。

こんなことを書くことは、
それこそ最善をつくしてくれているスタッフや
この作品の公開を心待ちにしてくださっている方々に対して
失礼なことなのかもしれませんが、
これが今の私のいつわらざる心境なのです。
だからこそ、今後もできる限りの努力をしようと
あらめて決意をする次第です。