メインコンテンツ | メニュー | リンクメニュー

ページ内容

2006年3月 7日

第四十八回 圧倒的な背景美術

先日、映像が完成しているカットをまとめて観てみたのですが、
その絵画的な背景は、まとまった量を観ることで、
圧倒的な存在感を持って迫ってきました。

その背景美術は、
まちがいなく映画『ゲド戦記』の見所のひとつであると、
確信しました。

アニメーション映画は「絵」で成り立っています。
だから、絵でなければできないことをやって、
初めてその真価を発揮します。

それは単に、「本当は実写で撮りたいけれど、
表現するのが難しいからCGで描く」というのとは、
根本的に姿勢が違います。

だから背景を描く際も、細かいディティールを描くことで、
写真のようにリアルなものを描くという方法はとりませんでした。
それよりも、そのシーンの時間・空間・場所、
さらにはそこに登場する人物の心理を
より豊かに表現する絵をめざしたのです。

しかし、これまで作業を進めてきて、
実は、こちらの方が写実的な方向よりも
難しいのではないかと思っています。

そういったディティールの描写に頼らないで、
豊かさをもった絵を描くためには、
単に「うまい絵」という基準を超えた、
映画全体の中のそのシーンの意味を描き込む
という構成力が必要とされます。
それによって、描き手は絵描きとしての技量や資質を、
もろに問われることになるのです。

そして、これらの高いハードルを乗り越え、
美術監督の武重さん率いる美術部のスタッフは、
『ゲド戦記』の世界観を、ものの見事に描き出しつつあります。