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2006年1月13日
第十七回 「色」に目からウロコする
昨日は、仕上げ部の長である保田さんがお休みに入っているため、
その後を任された2人のスタッフと一緒に、
思ったような色がなかなかでなくて、
モニターを見ながら、2時間ばかりウンウン唸っていました。
保田さんの水準に持って行きたいと思っても、
これがとてつもなく難しい。
今日は、色指定の奥の深さを書きたいと思います。
保田さんがよく言っているのは、
「色指定とは、単に物の色を決めているのではなくて、
そのものが何であるかを決める」ということ。
キャラクターの色を決めるとき、保田さんから、
まず着ているものの材質を尋ねられました。
主人公アレンのマントは、王子という身分にふさわしく絹でできていて、
世界を放浪している大賢人ゲドのマントは丈夫な毛織物です。
その材質が絹なのか、毛織物なのか、あるいは木綿なのかによって、
単に色が違うということを超えて、
その材質に合った発色を持つ色を指定しなければならないのです。
つまり、色の指定がそのものの材質を、
さらには、その人物像にまでかかわってくるのです。
これは本当に目からウロコでした。
そして、それが持っている色が決まれば、
後はそれを塗っていけばいい、というものではありません。
次に、それが置かれている状況を考える必要があります。
ノーマルな状態での色が決まっていても、
それをそのまま使えるシーンはそんなに多くないのです。
朝か昼か夜か、あるいは晴れか曇りか雨かによって、
そこにあるものの色は違って見えてきます。
具体的にいえば、
同じ夜でも、月夜の暗さとろうそくの灯る室内の暗さでは、
色の表現が違ってくるのです。
さらに、美術部の描いた背景のもつ色の中に置かれたときのことや、
そのキャラクターが、画面の中で遠くにいるか近くにいるかも
考慮しなければなりません。
そして結果的に、
キャラクターはもちろん画面全体が美しくなければならない……。
仕上げとは、リアリティを保証する理論と、
美しく見せる感性が必要とされる、
本当に頭の下がる仕事です。