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2005年12月28日

第十回 大賢人ゲドと社長スズキ

今年も、残すところあとわずかとなりました。
今朝、会社に来る途中、電車についているテレビを見上げると、
画面には「今日は仕事納めですね!」の文字。
でも、ジブリはもちろん通常業務、そして制作快調!です。

さて、前回の続きを書きます。

「独立」というと何かめでたいイメージがありますが、
実際は、そうとばかりもいえません。

現在、ジブリの社長を務める鈴木プロデューサーは、
「独立してしまうと、会社としても自分としても、
『会社』としての仕事が多くなり、映画の制作に専念できなくなる」と、
徳間書店から独立することを、本当に嫌がっていました。

しかし鈴木さんが、望まないながらも社長になったのは、
自分がまいた種とも言えます。
鈴木さんは、映画をつくり続け、「する人生」を送ってきて、
その結果として、「社長」という窮屈な立場になってしまいました。

ゲドも、世界の危機を救うさまざまな冒険を成し遂げ、
魔法の学院の長である大賢人となりますが、
本人は、決してそれを喜んではいません。

わしのほうは、うむ、いろんなものになった。
いちばん最後が、そして、おそらく、
いちばんつまらないものが、この大賢人というやつだ

これは、はからずも代表取締役社長になってしまった鈴木さん同様、
否応なく代表取締役大賢人になってしまったゲドの愚痴です。
大賢人ゲドと並べて書くのは、鈴木さんを美化しすぎですが。

しかし、物語の中のゲドはともかく、現実の鈴木さんは
どんないやなこと、面倒なことも逆手にとって楽しんでしまうので、
いつのまにか、社長業を苦にするどころか、
ますます自由に生きているようにも見えます。

そして、一見「ある人生」には目もくれず、
ひたすら「する人生」を邁進するように見える鈴木さんですが、
仕事に追われて、我を忘れているかというとそうでもなくて、
いつもどこかで、自分の人生をじっと遠くから見ている、
そんな醒めた雰囲気を鈴木さんからは感じます。

「する人生」と「ある人生」、みかけの行動と心の奥底、
そう簡単に分けられるものでもないようです。