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特集コラム「ゲド戦記はこうして生まれる」
2006年6月20日
(6) ―動画・動画検査―
今日は、「ゲド戦記」ファイナルミックスの二日目。
その様子は、追ってまた、レポートします。
今回は、「原画」作業の次の段階、「動画」について書いてみましょう。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
●動画とは何か
前回、「原画」とは、キャラクターの動き(=演技)を作り出してゆく作業だということを紹介しました。
しかし、それだけではキャラクターは完成しません。
原画アニメーターが、監督の演技指示の下、比較的ラフな線で、キャラクターの動き=演技を描き出してゆくのに対し、動画アニメーターは、原画の線をクリンナップし、動きのキーとなる部分のみ描かれている原画の画と画の間の動きを埋めてゆく、中割(なかわり)という作業を行います。
動画作業を理解するポイントは二つ。
「クリンナップ」と「中割(なかわり)」という言葉を、、覚えてください。
■クリンナップとは
原画のラフな線だけでは、適切に色を塗ることが出来ませんし、見た目にも統一感の無いモノになってしまいます。
クリンナップとは、ラフな原画の線を、最終的に画面に映し出される状態である一本の綺麗な線に描き起こす作業。僕らが実際に、テレビや劇場で目にするキャラクターの線は、動画アニメーターが描いたものなのです。
『原画の線(作監修正済み)』
『動画の線』
『完成画面』
以前のコラム「ゲド戦記の作り方・番外編」でも解説していますので、参照下さい。
■中割(なかわり)とは
前回、原画とは、一連の動きの中の、「キーとなる部分の絵を描く」と、書きました。
しかし、この原画だけを単純に再生すると、当然、ある動きとある動きの間に絵が存在しない為、パカパカとストップモーションの様に、見えてしまいます。
最終的に、スムーズな動きとして演技を完成させる為には、動画アニメーターが、原画と原画の間に新しい絵を描き埋めてゆく、「中割」という作業が必要なのです。
『中割の仕組み(クリックすると拡大)』
上が原画、下が動画です。
原画2枚の間に、更に2枚の動画が、追加されている事がお解りになると思います。勿論、元の原画の線も、キレイにクリンナップされています。
原画アニメーターと同様、動画アニメーターにも、この間の動きをイメージする為、演技に対する深い理解が必要とされるのです。
こうして、動画アニメーターが線を整え、原画と原画の間を埋めてゆく事により、綺麗な線で、スムーズな動きが完成します。
最終的に、このカットで動画アニメーターが描いた絵は、以下の通りになりました!
『左上から右へ見ていって下さい(クリックすると拡大)』
このサムネイル画像では、目を開く動きは省いてありますので、実際にはもっと多くの枚数を描いている事になります。
気の遠くなるような作業ですよね。
「ゲド戦記」では、最終的に、76000枚の動画が描かれました。
しかしまだこれで、終わりではありません。
全ての原画を、作画演出と作画監督がチェックをする様に、動画は、動画検査スタッフが1枚1枚全てチェックし、線が乱れていないか、動きはスムーズになっているかを確認し、初めて完成となるのです。
「ゲド戦記」では、動画検査の舘野さんと中込さん、補佐の藤井さんが、膨大な量の動画をチェックしていました。
こうして、キャラクターの動きは完成します。
この線画は、1枚1枚コンピューターに取り込まれ、仕上げ部で着彩されることになります。
次回は、レイアウト作業から並行して進められている、映画のバックグラウンド=「背景美術」について、書いてみたいと思います。