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「ゲド戦記」制作日誌
2006年5月12日
「ゲド戦記」原画・作監・終了!
昨晩、22:00。
作画監督のチェック、最後の1カットが終了しました!
作画インから8ヶ月。
驚異的なペースで、アニメーションが本来持つ「動かす面白さ」を、存分に描き出した原画スタッフたち。忙しい最中、「ゲド戦記」に合流して下さった、外注原画スタッフの皆さん。
そして、企画準備段階から、1年以上映画と向き合い、キャラクターの芝居から、たたずまいに至るまでをとりまとめ続けてきた、作画演出の山下さん、作画監督の稲村さん。年が明けてから、ふたりの作業を支えた、山形さん、二木さん、米林さん。
作品完成まで続く、長い長い章節に、またひとつ、読点が打たれました。
今日は、4月24日(水)の制作日誌「めくり暦の身もほそる」で予告した通り、稲村さんの横に貼られていた、カウントダウン・カレンダーの、最後の1枚をめくる日。
作画監督・稲村さんが、最後のページに記したモノは……?
『終わった時が、いちばんコワイ』
意味深な言葉ですね。
解説しましょう。
これは、アニメーションの世界に限った事ではありませんが、スゴイ仕事をする人は、自分自身に、とても高いハードルを課している人が多い。
「ゲド戦記」のメインスタッフも然り。
彼らの描き出す絵を見て、素人の僕らは感嘆するばかりですが、彼らは「いや、まだまだ」と、まるで求道者の様に、机にむかいます。
僕ら素人が、想像もつかないような高みを頭の中にイメージし、そこににじり寄ってゆく。スタッフの飽くなき執心が、映画の質を、一段も二段も上げる、最後の砦なのです。
メインスタッフは、自らの仕事が終わった瞬間、安堵と共に、得も言われぬ恐怖に襲われると言います。
自分の仕事はこれで良かったのだろうか。まだ、出来ることがあったのではないか。お客さんは喜んでくれるだろうか──。
今後続くラッシュチェックと、映画の完成日。そしておそらく、公開から数年後まで。作業は終了しても、彼らの戦いの場は、紙の上から、自分との戦いというステージへと、その場所を移すのです。
稲村さんのカウントダウンカレンダーの記述には、そんな、メインスタッフの想いが込められているのです。