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「ゲド戦記」制作日誌

2006年4月26日

ありがとう、ソフィーさん!

 
 今日は、僕が尊敬しているスタッフのお話。

 朝、出社して、1階から2階へ登ってゆくと、その方はいます。


 階段を、一段一段、雑巾で綺麗に磨いているその背中。
 ジブリには毎日、4名の個人スタッフと、メンテナンス会社の方が、日替わりで共有スペースのお掃除にきて下さっているのです。

 
 席につき、前日までの作業実績やメール等を整理。3階のバーで一服していると……2階から3階へ続く階段から、


 「ホッ ホッ」


 と、静かなかけ声が聞こえてきます。

 2階の掃除を終えたスタッフの方が、3階へと登ってくる、その息づかい。
 ほのぼのとした充実感が、こめかみの辺りにみなぎってきて、


 「よし、オレも頑張るゾ!」


 という気持ちにさせてくれるのです。


 鈴木プロデューサーは、


 「机が整理されていない人は、仕事も整理されていない」


 と、自分の机はおろか、人の机まで片づける人ですが、毎日、スタジオを綺麗に掃除してくださっているスタッフの方々の仕事が、映画の画面に与えている影響は計り知れない、と僕は思っています。
 
 
 トイレがキレイ → スッキリ → 仕事はかどる
 
 
 この定理に優る真実が、他にありましょうや! 


 お掃除スタッフの方々と、よく話をしているのが、宮崎駿監督。
 時折、第2スタジオから第3スタジオの間の道路で、なにやら楽しそうに話しているのを目撃する事があります。

 僕は密かに、「ハウルの動く城」のソフィーは、お掃除スタッフの皆さんがモデルになっているのでは……と思っています(笑)


 3時過ぎ。


 1階のバーへコーヒーをいれに行くと、カウンターで、皆さんが、お弁当を広げています。

 身体を目一杯使って、一日の読点を打ちながら食べているお弁当の、美味しそうな事といったら!

 日頃、「今日は美味いラーメン屋にいこう!」などとのたまっている自分が恥ずかしく、ならば負けじ! と意味もなく階段を駆け上がって、仕事に戻ったのでした。


 映画「ゲド戦記」のテーマのひとつは、「心と身体のバランス」。


 この場を借りて。

 いつも、スタジオをキレイにして下さって、ありがとうございます。