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「ゲド戦記」制作日誌

2006年3月 9日

「家具屋ジブリ」オープン!

 
 今日は15:00から、後半の重要な室内シーンの、美術打ち合わせが行われました。

 この間何度か取り上げた、作画打ち合わせ(作打ち)と同様、背景美術も、個々のスタッフがシーン(場面)ごとに手分けして作業を進めます。


 美術監督の武重さんが、絵コンテとレイアウトを前に、ひとつひとつのカットの内容を指示してゆきます。

 この内容が、実に緻密且つ具体的。


 
 「時刻は夜、○○の部屋の中です」

 「窓には、鉄の格子がはまっていて、(ステンドグラスの様に)ガラスがはめ込まれています」

 「ガラスの質感は、拭きガラスにしてください」

 「このカットは、床にロウソクの光が落ちていますが、影の輪郭はクッキリ出はなく、少しぼけた感じで」

 「手前の扉の木の質感は……」


 ふう。
 
 当然の事ながら、アニメーションは画面に存在する全ての物を、手で描かなければなりません。映画の世界観・時代背景から、そのシーン・カットの持つ意味に至るまで、監督と綿密な話し合いを重ね、画面に存在する物体の、素材まで決め込むのです。
 極端な例ですが、電気の発明されていない時代の映画に、電灯が登場したら、ヘンですよね。


 皆さんが、家具屋さんで家具を選ぶ時を思い出してください。


 テーブルひとつ購入するにも、「何でも良いので木のテーブルを下さい」とはなりませんよね。

 自宅のカーテンの色が明るければ、ナチュラルな木目調の家具を選ぶでしょうし、部屋の雰囲気を、落ち着いたトーンにしたければ、ダークブラウンの家具を選択肢に入れる事もあるでしょう。


 映画も然り。
 
 そのシーンを構成する様々な要素──画面の雰囲気から素材に至るまで、質感・色のバランスを考えて描かなければ、「世界観をともなった画面」は成立しないのです。


 背景美術のキモは家具選びにあり、というお話でした。
 
 
20060309_candle.jpg
『ローソクの光をシミュレーションする為に描かれた美術ボード』