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「ゲド戦記」制作日誌
2006年3月 2日
グラデーションに酔うべからず
昨日から、背景美術部に、研修生が入りました。
北海道出身で、山形の某美術大学で日本画を学んだ佐藤さん。
早速今日から佐藤さんは、研修生担当の西川君のもと、グラデーションの練習に入っています。
グラデーションとは、アニメーションの背景美術で最も多く登場するシーンのひとつ「空」を描く技法。
晴れた日、空を見上げた時の事を思い浮かべてみてください。
空は、地平線に近いほど色が薄く、上の方へゆくほど色が濃くなります。
水色→青→紺
といった具合に。
この濃淡描写=グラデーションをマスターする事が、背景美術スタッフに仲間入りする第一歩なのです。
興味深いことに、この、グラデーションの練習には、あまり時間をかけない方が良いそうです。なまじ練習に時間をかけてしまうと、自分の作った空の濃淡に酔ってしまい、常に、きっちりとしたグラデーションを描くクセがついてしまう。
ところが、実際の空は、生きものです。
時間によって刻々と変化し、空が完璧なグラデーションを描く瞬間ばかりではありません。
時には、少し粗いグラデーションの上に、雲をのせることによって、粗い部分と雲のつなぎ目が、新たな空気感を呼び、イメージ以上の空が生まれる事があるのだそうです。
どんな仕事も、自分の仕事に酔うと、そこで止まってしまうのですね。
確かに、自分の仕事に自信を持ちすぎて、完璧を求めている時ほど、仕事は上手くいかないモノです。
さらに面白いことに、次から次へと他の課題をこなしていって、ある日突然グラデーションをやってみると、最後にやった時よりもうまく出来ることが多いのだとか。
これも、人間の脳の特性。しばらく、頭の中で整理する時間が、新たな飛翔を生むのですね。
研修をのぞきこみながら、改めて自分の仕事を顧みた次第です。
『練習中の佐藤さんの机』