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「ゲド戦記」制作日誌

2006年2月21日

病めど沈まず

 
 どんな仕事にも、職業病というものがあります。


 頭脳を疲弊させるお仕事から、肉体を酷使するお仕事まで。職種が多岐にわたる現代は、まさに職業病の万国博覧会といったところ。

 職「業」病と書くくらいですから、その人の背負った運命──前世の報いのようなモノ。時に押し潰されそうになりながらも、うまくうっちゃって付き合ってゆくより他、ありません。

 勿論、ジブリの中で、完全な健康体の人なんて、ひとりもいません。皆、何かしら身体に不調を抱えて仕事と向き合っています。


 アニメーターや背景美術、いわゆる「絵描き」と呼ばれるスタッフの三重苦と言えば、「眼精疲労」「腰痛」「腱鞘炎」。

 ジブリには、毎週土曜日に整体の先生がいらして、希望者に整体を施してくれますが、各々、スポーツクラブに通ったり、自転車通勤をしたり、針やマッサージに至るまで、少しでも症状を軽くすべく、腐心しています。
  
 ある動画アニメーターは、手首を長時間同じ状態に保っているため、手の甲が、一定以上反り返らないのだとか。試しにやって貰うと、確かに、利き腕だけ明らかに、固いのでした。

 お世話になっている背景美術監督の方は、時間帯によって、老眼鏡を3つ使い分けているそうです。


 僕の親しい、ベテランアニメーターH氏のお話。

 素晴らしい上がりを、コンスタントにあげて下さるH氏の事だから、きっと体調管理も万全に違いない! と、こんな質問を投げてみました。
 
 
 
僕「Hさんは、何か体調管理する為に気をつけたりして事あるんですか?」


H氏「一切しません。体調が良すぎても、それを維持するのが大変だし、悪すぎたら仕事にならない。『ちょっと調子が悪い』くらいが、一番良いンです」
 
 
 
 至言ですね。
 
 世の中、身体はおろか、頭蓋の中まで若返ろう! と、健康ブーム真っ盛りですが、適度な不健康を維持する健康……というのも、アリかもしれません。
 
 
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『作画部のお茶くみ場に貼ってあるストレッチマニュアル』