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「ゲド戦記」制作日誌

2006年2月20日

男たちの旅路

 
 土曜日の夜。

 美術監督の武重さんと、ベテラン美術スタッフ吉田さんが、完成した背景を、鼻をこすりつけんばかりに、覗きこんでいました。

 
武重「ここに参道があるんだよ。そこでここを降りてさ……こう抜けると、海に出るんだよな」


吉田「ああ、成る程ォ! そうなンですね。じゃ、アレンとゲドが入ってきたのは……」


 やけに楽しそうです(笑)

 ふたりの間に広げられているのは、物語の舞台となる巨大な町の全景。
 通常の画用紙四枚分(大版と言います)に、吉田さんが5日かけて描いた街並みは、覗いていると、吸い込まれてしまいそうな精緻さ。一軒一軒の家々から、海に浮かぶ小舟まで、きっちり描き込んであります。


 先ほどの会話は、その街の絵に、美術監督である武重さんが直しを入れながら、ふたりで仮想旅行をしていた……という訳なのでした。


 昨年の作画インから休み無く、自宅とスタジオを往復するふたりに、旅行なんて望むべくもなく……。せめて映画の中を旅しようという、良く言えば夢のあるお話……身も蓋もなく言えば、現実逃避(泣)


 もちろん僕も旅の仲間に加わり、小旅行を楽しみました(笑) 


 なんと、吉田さんはこの絵に、こっそり「鯉のぼり」を忍ばせたとか。

 武重さんの直しで消えてしまったかもしれませんが、この夏、劇場で探してみて下さい。