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「ゲド戦記」制作日誌
2006年1月30日
カントクのお仕事はリアルタイムに進行中……
これは、9:00から21:00までの間に、ゴロウ監督のまわりで起こった出来事である。
□09:00
出社。
コーヒーをすすりながらノートPCを開き、前日の作業量をグラフに入力。この間描いたレイアウトは、318カットを越えた。今日の目標は、残り手持ちカットの消化。
作画部は禁煙の為、口寂しさを紛らわすために、火をつけない煙草をくわえて椅子にあぐらをかき、鉛筆に意識を集中。レイアウトを描き始める。
勿論BGMは、「ゲド戦記」の主題歌。
□10:30
午後はチェックが立て込む為、ひたすらレイアウト作業に没頭。スタッフが出社してくるが、皆一様に、呆然とした表情。毎週月曜日を、現場では「ブルー・マンデー」と呼んでいる。皆、疲れがたまっているのだ。
□12:00
隣の席に座っている撮影監督の奥井さんと、ラッシュチェック前の画面チェック。今日は、背景とキャラクターが合成された画面に奥井さんが加えたエフェクトと、カメラワークのチェック。トラックアップ(カメラを対象物に近づけてゆくこと)にするか、止めたままにするかを相談。
□13:00
第1スタジオ3階のミニバーへ。束の間の休息。弁当を広げる。
もう何年も手弁当で、ほとんど外食をしていない為、最近、ちょっとでも添加物の入った食事を摂ると、すこぶる調子が狂う。八分つき米と野菜中心の弁当をかっ込み、3階の中庭で一服。流れる雲を眺めながら、現在作業中のキャラクターの色指定をどうするか、黙考。
予告編のスタジオ作業を明日に控えてテンパッている宣伝担当・岸本(通称なよちん)をいじくり、ストレス解消。
作画部に戻って、再び、レイアウト作業開始。
□14:00
後半シーンをお願いする外注原画アニメーターと作画打ち合わせ。前の作品が終わったばかりなのに、お疲れ様です……。
□16:00
作画監督の山下さんと、上がってきた原画のQARチェック。
QAR(Quick Action Recorder)とは、原画をパソコン上に取り込んで再生し、キャラクターの演技をチェックするシステムのこと。キャラクターの演技や画面の出入り、台詞のタイミング等を何回も見てチェックし、修正の内容を検討。前後のカットとのつながりも考えて、頭を絞る。
□17:00
CG部長の片塰さんと、○○が崩れ落ちるカットのシミュレーションチェック。
□18:00
美術監督の武重さんと、冒頭・海のシーンの背景チェック。
このシーンは、空に幾重もの雲が流れるため、背景が別々の紙に描かれており、完成画面を想像しながらチェックしなければならない。いくつか修正が出たが、概ねOK。グルっと美術部を歩き回り、各スタッフの作業状況を確認。
□19:00
仕上部で、キャラクターの色指定チェック。
最近解ってきたのだが、ノーマル(日中の光)の画面では、キャラクターの明度を極端に上げ下げしない方が良さそうだ。むしろ、背景の持つ色味に合わせて、色系をふったほうが、「こってり」とした色が出る。早速、色指定担当のスタッフと試行錯誤。何事も、実践あるのみ。
□20:00
先日借りた「グループ魂」のアルバムのお礼に、キューンレコードさんから送って頂いたプロモーションビデオのテープを、美術部Iさんに渡す。早速、人だかりが出来ていた。更なる普及の為、制作の石井に、「家で奥さんと一緒に聞いてくるように」と厳命。
再び武重さんと、今宵まとめて上がってきた、某大御所背景美術スタッフの背景チェック。素晴らしい上がりに、心が洗われる思い。ラッシュの大画面で観るのが楽しみだ。
□21:00
一服するために、ミニバーへ。
折しも、制作部の渡辺さんと伊藤君が、今日起こった、とあるトラブルについて話し合っていたので、石井と四人で相談。次から次へと予期せぬ事が起こるが、ひとつひとつ整理して、解決策を練ってゆくしかない。
しばし雑談した後、先日完成した予告編の仮編集ビデオを見て、やる気を奮い立たせる。
よし! 席に戻ってレイアウトの残りをやらなくちゃ!
ピッピッピッピ・・・ピピピピピピピピ…………
※出来事は事実ですが、文責は筆者にあり、ゴロウ監督の主観とは一切関係ありません。