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「ゲド戦記」制作日誌
2005年12月27日
制作部のお仕事
今夜は、鈴木プロデューサー・監督・制作部による、制作全体打ち合わせが行われました。
年明けから公開前の追い込みにかけて、「ゲド戦記」を完成に導くために何が必要か。月に一度の、とても大切な打ち合わせです。
その内容は……当然の事ながら、極秘扱いです(笑)
そこで今日は、制作部の仕事について、書いてみたいと思います。
制作部とは、アニメーション制作のスケジュール管理をする部署です。
実際に画を描いたり、音を作ることはありませんが、各部署の作業状況を把握し、制作を円滑に進める為に、現場を走り回って作業の管理を行う、作品制作の要です。
優秀な現場スタッフと制作部が両立しなければ良い作品は生まれない。
(鈴木語録より)
鈴木プロデューサーは、スタジオがどんなに大きくなっても、作る現場がしっかりしていなければ元も子もない、と言います。最近は、ビジネス面においてスポットが当たる事の多い鈴木プロデューサーですが、「風の谷のナウシカ」から、「ゲド戦記」に至るまで、一貫して作品制作の現場に目を配ってきました。今日の打ち合わせは、現場をあずかる制作部と、プロデューサー・監督の連携を、密にする為に行われているのです。
制作部の最も大きな仕事は、前述の通り、スケジュール管理。
後ほど「ゲド戦記の作り方」で詳しく紹介したいと思っていますが、アニメーションは、カット単位、枚数単位で、スケジュールの管理をしています。
例えば、週にひとり、平均2カットの原画を上げる、という目標を立てたとしましょう。
仮に作画期間が7ヶ月とすると、28週。この間に、ひとり56カットの原画を描く事が目標という事になります。(勿論、画の内容によってスケジュールは大きく変わりますから、一概には言えません)
劇場作品は、1000カットを越えますから、各スタッフが手分けをして、ひとつの作品を作り上げてゆきます。10人であれば、7ヶ月で560カット。20人なら、1120カット、という計算が成り立つ訳ですね。動画や仕上は、一枚一枚の枚数。背景は、カットと、カットごとの枚数によってスケジュールを把握します。
しかし、単に数字を追いかけるだけでは作品は完成しません。
カットごとの内容や、画面処理の有無、スタッフの特性に至るまで、様々な事を把握し、制作部内で話し合い、ひとりひとりのスタッフと話をしながら、作品の完成ににじり寄ってゆく。数字を追いかける事よりも、各スタッフとコミュニケーションを図る事が、制作部の最も大事な仕事です。
とかく、過酷な仕事の内容が取り沙汰される事の多い制作という仕事ですが、実際に画を描かない僕にとって、制作部こそ、アニメーション制作現場の中で、最も面白い場所だと思っています。
作品全体に関わり、スタッフひとりひとりと信頼関係を築きながら一本の作品を作りあげる。これほどスリリングな仕事は、なかなかあるものではありません。
最近、アニメーション業界では、20代後半から30代中盤までの、比較的若い制作スタッフが活躍し始めています。昨日、押井守監督作品「イノセンス」を制作した「プロダクション・アイジー」の石川光久社長とお話ししたのですが、アイジーでは今、若い制作スタッフに大きな現場を任せ、現場の活性化を図っているそうです。
お互い刺激を受け合いながら、アニメーション業界を、制作の現場から活性化させていきたいな、と考える今日この頃です。
……。
制作部のみんなが、「歯が浮く!」と笑っているので、今日はこのくらいで……。