2003年1月

1月6日(月)
 みなさん、新年、明けましておめでとうございます。
本日から、スタジオジブリ広報が、しばらくの間この日誌を担当いたします。題して、“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”。

 みなさん、既にご存知かもしれませんが、来たる1月24日夜、「千と千尋の神隠し」が日本テレビ系列で放送されます。このスペシャルなイベントに向けて、日本テレビは総力を挙げて番宣(番組宣伝のこと)に取り組んでいます。というのも、OA開始が通常の金曜ロードショーの枠より30分早く、“午後8時30分“という冒険に打って出るからなのです。

 「千と千尋の神隠し」の本編は124分35秒余ということで、コマーシャルやお知らせを入れると2時間40分の放送枠が必要となります。通常の9時開始だと終了があまりに遅くなってしまって、小さなお子さんには厳しい時間となってしまうので、苦肉の策で、開始時間を早めることにしたんだそうです。せっかくのテレビ初登場なのですから、「映画は午後9時から」という長年の慣習を打ち破って、みなさんに観てもらうにはどうしたら良いのか?日本テレビとスタジオジブリの長いチャレンジが始まっています。

“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その壱
 昨年末にジブリ美術館に行った方はご覧になったかもしれませんが、「もういくつ寝ると、逢えますか?」のコピーが入った図のようなチラシが作られて、「マンマユート」ショップで配布されています。このチラシは「思わず欲しくなって手にとってしまう」ことを目指して担当者が絵柄と紙質に吟味を重ねた逸品で、100万枚が製作されました。ただし、美術館だけでは、配布できる数が限られているので、1月9日付の朝日新聞(関東地区のみ)にも折り込まれる予定です。また、地方の方でもご覧になれるように、新聞広告という形でもカラーで出稿の予定(読売新聞)ですので、これから24日まで、読売新聞を注意してご覧になることをお勧めします。

本日のチェックポイント
 ・1月9日 朝日新聞朝刊(関東地区のみ)
 ・金曜ロードショーの折り込み広告チラシ

 さらに、日本テレビ系列ではいくつか特番(特別番組)も組まれます。今日も一日中、その打ち合わせが行なわれていました。そして、明日、その第一弾のロケがスタジオジブリで行なわれるはずです。その模様は、次回の更新で掲載予定。
お楽しみに。
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1月7日(火)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その弐
 今日は、「TV初登場!千と千尋 シックスセンス 3大ドラマ 超監督対決(秘)映像SP」(1月13日 10:30-11:25OA)という祝日のスペシャル番組のロケが行なわれる。ダイノジという吉本のお笑い芸人と船越アナ(日本テレビ)がジブリにやってきて、宮崎監督を探して社屋をウロウロする企画。スタジオは一時帰休中なので、ほとんど人が見当たらない。広報のUさんの案内で宮崎監督の机までどうにかたどりつくのだが、そこにあるのは、書きかけの「ハウルの動く城」の絵コンテと眼鏡と脱ぎっぱなしの靴だけで、肝心の姿はどこにもない。そこで、監督の居場所を聞きに鈴木プロデューサーに会いに行くのだが、部屋に入るや鈴木さんの摩訶不思議なトークに巻き込まれ、すっかりジブリファンになってしまう、というのがストーリー。「金曜ロードショーの視聴率が50パーセント超えたら、ダイノジの次回作への声の出演も考えておく」という鈴木さんの口約束に、ますます「千と千尋の神隠し」の宣伝に燃える一行なのであった。

 驚いたのは、番組宣伝用に「釜爺」と「湯婆婆」の着ぐるみが新たに作られている、という事実。これまで、映画の宣伝時には「湯婆婆」「カオナシ」「おしらさま」の3体しか作られていなかったので、「釜爺」が新たにファミリーに加わったことになる。ただし、これは、宮崎監督の監修を受けていない未公認品なので、ちょっとドキドキ。知らなかったことにしておきたい、と思うのは、小心者の広報担当ばかりなり。(写真は、釜爺の着ぐるみを被って嬉しそうに(顔は見えないのに?)ピースサインをする日本テレビ宣伝部の小串さん)

 このあと一行はJR三鷹駅の南口にいって、番宣の旗を振りながら、「1月24日、金曜ロードショーを観てくださーい!」と街頭アピールをするのだそう。くれぐれも警察の指導を受けてニュースに取り上げられたりしないようにと、祈るような気持ちで見送るの広報スタッフなのであったのだが、果たして結果はどうだったのだろう?

本日のチェックポイント
 ・1月13日 午前10:30-11:25放送「TV初登場!千と千尋 シックスセンス 3大ドラマ 超監督対決(秘)映像SP」
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1月8日(水)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その参
 今日、徳間書店の書籍販売部の米井さんからメールが届く。(実は、米井さんは広報部員Uのファンクラブ代表らしい。夏と冬に行なわれる出版部の飲み会に広報がゲストで呼ばれるのは、そのせいなのか?)

 「HPの日誌読みました。しばらくは広報部が担当されるとのこと。で、千尋関連が書かれていたので、こちらも是非アピールしたいのですが。徳間の販売部も負けてはおりませんよ。宣伝・書籍・雑誌販売部一丸となり、千尋TV放映+アカデミー賞受賞関連に向け動いております。」
との熱い文面!了解しました。さっそくPRいたします。

 「1月16日からは、鈴木プロデューサー発案の「また会えるね、千尋」メインキャッチにしたTV放映告知の短冊ポスター(縦長の細いポスター)が全国約2000軒の主要書店店頭に貼付されるそうです。また、新たなPOP(「Point Of Purchase Advertising」の略。普通、ポスター以外の店頭に置かれる広告用の立体物をいう)が制作され、「千と千尋」関連商品を集めたコーナー展開が開始されるとのことです。」

 徳間書店もがんばっているようです。映画公開から一年半もたつのに、この力の入れようは異例のことだと思います。ぜひ、本屋さんの店頭で、確認してみてください。

本日のチェックポイント
 ・「また会えるね、千尋」のPOP、本屋さんの店頭に登場。1月16日から!
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1月09日(木)
 今日は“オンエアへの道”はお休みして、映画に関係した「よもやま話」を一席。「千と千尋の神隠し」に出てくる「湯屋」についてです。

 まず、「湯屋」と「油屋」はどちらが正しい表記なのかという質問をよく受けます。これは、「ゆや」というのは「お風呂屋さん」を意味する言葉で「湯屋」と表記し、そのお店の名前(屋号)は「あぶらや」で「油屋」と表記するのが正解です。昔は、「風呂」というと温室のようなものを意味していたそうで(サウナ風呂みたいなものか?)、「風呂屋」とは違う「お湯につかれるところ」という意味で「湯屋」という言葉を使用したのだそうです。しかしいつのまにか、これらが混同して用いられるようになり、「湯屋」という日本語もだんだん使われなくなっているとのことです。

 また、湯屋「油屋」のモデルはどこか、という質問を映画の公開直後からたくさんいただきました。この件について、宮崎監督に直接質問したことがありますが、監督の答えは、「色々な温泉が入っていて特定のモデルはないけれど、道後温泉は確かに入っている」とのことでした。これは、「スタジオジブリ絵コンテ全集13 千と千尋の神隠し」(徳間書店刊)をお持ちの方なら「カット番号733」(333ページ)を見ていただければわかると思いますが、河の神様が出て行く大戸に「導後」という文字がはっきりと書かれています。そう、これは松山にある「道後温泉本館」を示唆しているのではないかと思われます。

 映画の設定である「商店街の一角にそびえ立つ銭湯」について、大いにインスピレーションを与えたのは、「江戸東京たてもの園」の「子宝湯」(こだからゆ)です。ただし、子宝湯の建物自体は「油屋」のように巨大なものではなく、建物のイメージは幾分異なります。 (写真は、「江戸東京たてもの園」の東ゾーンの街並みと「子宝湯」)

 映画の効果音の採集に協力していただいた温泉地として、「群馬の草津温泉」「福島のいわき湯本温泉」がありますが、これはもちろん「油屋」とは一切関係ないでしょう。
公開後、「山形の銀山温泉」「宮城の鎌崎温泉」「群馬の四万温泉」「長野の渋温泉」「鳥取の羽合温泉」などの温泉宿から、「うちがモデルではないか」というお話をいただきました。いずれも、古風で立派な建物で、なかには、正面に赤い橋が架かっていたり、大きな湖に面していたりする、映画にそっくりな湯屋もありました。また、同じ「油屋」の屋号を持つ温泉旅館は国内に何軒かあり、中でも長野県の諏訪湖畔に建つそれは、結構似ているようにも見えます。これらの温泉地に監督が訪れたことがあるのか否かについては、残念ながらわかりませんが、監督が特定のモデルはないという以上、正解ではないようです。(これらの旅館はいずれも魅力的な温泉宿ばかりで、ジブリ温泉部の人間としては、一度お邪魔しようかなぁと考えています)。

 ただ、このような声が全国から寄せられたことからわかるのは、「千と千尋の神隠し」の湯屋が、ちょっと昔の日本では珍しくなかった建物を「象徴的に再現」しているという事実です。こうした点も、「千と千尋の神隠し」で描かれた風景が多くの日本人の琴線に触れ、感動を与えた一因なのかもしれませんね。
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1月10日(金)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その四
 本日は、「アナちゃん劇場」の番組ロケ。チューヤン(香港代表)、ニコラス=ペタス(ヨーロッパ代表)、サミュエル=ポップ(アメリカ代表)、ニラ(インド代表)、オウバ=エリカ(南米代表)といったジブリ作品ファンの外国人の方々に、映画を見てもらったあと、ジブリの建物や美術館を訪ねてもらって、ジブリを体験してもらう企画。

 ジブリでは、鈴木プロデューサーに率直な質問をぶつけて、トークするのだが、「どうしてススワタリに手足があるの?」とか「カオナシってストーカーなの?」とか「ハクは神様なのに、なぜ千尋と同じくらいの年なの?」とか「どうして、お父さんとお母さんは千尋より先に行って待っているの?」とか、ジブリの社内では口にするのもはばかられるような本質をついた鋭い質問続出で、鈴木さんもタジタジの様子。これらの質問の答えが知りたいなぁと思った方は、番組をチェック!

 その後、バー(といっても、お酒を飲むところではありません。ジブリの食堂兼応接所)に場所を移して、「お絵かき大会」。つまり、「千と千尋の神隠し」のキャラクターの絵を思い出しながら描くという課題。噂に聞いていたが、チューヤンはダントツで絵が上手い。千尋の困った表情が見事に捕らえられている。でも、なぜか千尋を描くと必ず困った顔になっているのが、ナゾ。また、ペタスさんの芸術的なススワタリも捨てがたく、エリカさんのヒマワリのようなススワタリも味がある。ニラさんのボーッと浮き出たカオナシは怖いし、サミュエル=ポップさんのカトゥーンのキャラクターのようなポップなカオナシも良かった。

 一番爆笑だったのは、「これを見せたら、私のアナウンサー生命が終わる」とまでいっていた宮崎宣子アナのカオナシで、これはどう見ても「ただの指」にしか見えないのであった。これらの絵が見たくなった人も、番組をチェック!

 ロケは、早朝から深夜まで続いたのだが、出演者の皆さんはさすがにプロで、最後まで頑張っていたし、番組を盛り上げようと一生懸命だった。ペタスさんの、ジブリ作品に対する造詣の深さとか、「映画の生まれるところ」(ジブリ美術館1階の常設展示室)で「スゴイ・・・」とつぶやきながらイメージスケッチをじっと見詰めるチューヤンの横顔も印象的だった。こんな、出演者の一面が見たくなった人も、番組をチェック!です。

本日のチェックポイント
 ・「アナちゃん劇場」 「千と千尋」ワールドプレミア試写会
 ・1月20日-24日 15:50-16:00、1:25-1:35放送(関東のみ)
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1月13日(月)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その五
 今日は午後から「TVおじゃマンボウ」のロケ。日本テレビ期待の美人アナ「小野寺麻衣アナをジブリ美術館で格好よく撮る」のが本日のテーマらしい(担当ディレクター談)。ジブリ美術館の中央ホールや展示室の中で、一般のお客さんもいらっしゃる中での収録は混乱を招いて大変ではと危惧したのだが、周囲のお客さんはあまり関心がない様子。カメラを邪魔することもなく、撮影は順調に進む。昔だったら、ピースサインをする子供などが必ず出たものだが(この文を書いている本人もそうだったし)、最近の子供たちは、小さな頃からカメラ慣れしているせいかもしれないと思う。

 パティオ(ヨーロッパ風の石畳の中庭。井戸や薪割り小屋がある)の撮影では小さな子供たちがカメラを意識することなく自然に遊んでいて、いい雰囲気の画になっていたのだが、周囲から子供を見守るお母さんたちには、「今週末のTVおじゃマンボウ、見てくださいね。お子さんも写ってますから」と、しっかりアピールも忘れない。また、小野寺アナは、モデルか芸能人と間違えられていたらしく、さかんに記念写真をねだられていた様子だった。

 こうしてロケは定刻通りに問題なく終了。いつも、こんな風に問題が起こらなければ良いのに、としみじみ思う(休日返上の)美術館とジブリの広報担当者たちであった。

 (後日談)スタジオジブリCG部の松村さん(日本テレビから出向中、入社2年目)に宮崎アナ(入社1年目、アナちゃん劇場)に続いて小野寺アナ(入社3年目)にお世話になったことを話すと、「どうして、うちの代を飛ばすんでしょうかねぇ」と、腑に落ちない様子。別に松村さんの同期のアナが、どうとかといっているわけではないのだが・・・。

 写真は、収録に際してディレクターの指導を受ける小野寺アナとスタッフ
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写真は、収録に際してディレクターの指導を受ける小野寺アナとスタッフ

本日のチェックポイント
 ・「TVおじゃマンボウ」 アニメーションができるまで(仮) 1月18日 17:00-18:00放送


1月14日(火)
 今日は“オンエアへの道”はお休みです。その代わり、今回はCG部のKさんについて、私「広報U」がお話致します。

 今日は、デジタルコンテンツグランプリ(財団法人デジタルコンテンツ協会主催)のエンターテイメント部門に「ギブリーズepisode2」が一次審査を通過した報を受け、プレゼンテーションに青山に向かう。専門的な説明が必要な為、CG監督のKさんがプレゼンテーションを行なう事となったのだ。

 Kさんといえば、自分でも「僕は口から生まれてきたようなものなので・・・」と認める程、本当によく喋る人。会社では、物腰やわらかでやさしく、人気者である。CG部ではのんびり屋で、究極のマイペースなのだと風の噂では聞くのだが...。ヒゲをはやしているので、普段はヒゲをもじゃもじゃ動かしながら喋るのが印象的。一方、家庭では愛してやまない愛妻と愛娘を持つらしい。事前に伝えたM監督からは、「彼にまかせておけば大丈夫」と、信頼も厚い。

 プレゼンテーションには10分間しか与えられない。その短い時間内で、作品の内容や、どのような工程でシーンが出来上がったのか、専門的な説明もわかりやすくまとめられ、技術を駆使した点について的確に要点のみを説明していく。次から次へ続く解説に、そんな気の遠くなりそうな作業を延々としていたのか・・・と、いつの間にか私Uも審査員の方々と一緒に、フムフムと聞き入ってしまっていたのであった。

 行きや帰りの電車では、愛娘のお話などたくさん聞く事ができたのだが、そんな話をするKさんは、まさしく父親の顔であって微笑ましかった。そういえば以前、「いつか娘におじさん扱いされて、くさいって言われるんじゃないかな?」と恐れていた事もあったなと思い出したが、大丈夫、そんな事はないだろうと私は思う。


1月15日(水)
 先週末からの連休中に、宮崎監督のアトリエ二馬力で、正面に飾ってあった看板が盗難にあうという事件が勃発。下の写真を見てもらえば分かるように、看板の中心に描いてあった豚の絵の部分が無くなっている。かなり強力な接着剤で建物自体に固定されていたものを強引にはがした跡が残っている。

 盗難といえば、以前ジブリが吉祥寺にあった時、宮崎監督のイメージボードが盗まれ、中野にある某ショップで売りに出されたことを思い出す。前回は言ってしまえば使用済みのものが盗まれたわけだが、今回は宮崎監督お気に入りのアトリエの看板である。毎日見る建物である。もちろんすぐに警察に盗難届を出したが、みなさんも、もしどこかのオークションサイトで、宮崎駿画、豚の絵が出ていたら御一報願いたい。
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左が盗難前。右が盗難後。


1月16日(木)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その六
 今日は、朝の情報番組「ズームイン!!SUPER」の鈴木さんのインタビュー収録で、またまた日本テレビのスタッフがやってくる。約束の時間よりちょっと早めに来て、おもしろそうなモノをカメラに収めていくのだが、これだけ同じテーマで取材が続くと、新ネタはそう簡単に見つからない。ピクサー社から送られたパネルとか、アメリカ版のポスターとか、さんざん取り上げられたもの。そこで、今日は、ちょっとサービスすることにした広報担当。鈴木さんの部屋に案内して、(鈴木さんがいないことをいいことに)「ベルリン映画祭の金熊賞の賞状」とか、「ラセターさんと宮崎さん、鈴木さんの3ショットの写真」とかのありかをこっそり教えてカメラに収めてもらう。

 特に、金熊賞のトロフィーが棚の中に飾られているのを発見したスタッフは「金庫の中にしまってあるのかと思っていました」と大変驚いていた様子。なかでもカメラマンはちょっと手を伸ばして、「触った!触った!」と興奮していたのだが、普段から鈴木さんはいろんな人に触らせては感激されるのがお約束と化していることを知っているので、「それを教えてあげないほうがこの人のためかもしれない」と思う、心優しい広報担当なのであった。

 収録は、鈴木さんのペースで40分にわたって密度の濃い話が続いて、ディレクターは感激していた。オンエアはほんの2、3分だろうと聞いているので、これから編集するのは大変だなぁ、と他人事ながら心配になる本日の収録なのであった。

本日のチェックポイント
 ・「ズームイン!!SUPER」 「千と千尋の神隠し」特集(仮) 1月22日(水) 23日(木) 24日(金) 7:30頃放送
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写真は、ピクサー社から贈られた「トトロとサリー、マイクが夢の共演成し遂げたパネル」の取材中


1月17日(金)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その七
 映画の番組宣伝も、いよいよ大詰め。まだ紹介していない特番は、あと2本。今日は、その2本を一挙に紹介。

 実は、このスペシャルは2本ともテレマン(テレビマンユニオン)の制作。ジブリ特番ではすっかりおなじみの制作会社で、現時点でもっとも信頼されているスタッフである。担当ディレクターは八幡さん。「宮崎駿を撮らせたら右に出るものはない」という肩書きを持つ女性なのだ。

 一本目は、「千と千尋の神隠し」の見どころスペシャル。いわゆる番組のメイキング番組ですが、これまで、オンエアされなかった秘蔵映像も公開の予定とか。平日の午前中なので、仕事や学校の人は、是非、エアチェックを。

 もう一本は、オンエア直前のスペシャル番組。今回の一連のスペシャルの中でも、一番の注目作だ。昨夜も、赤坂のテレマン分室まで、オフライン(仮編)のチェックに出かけてビデオを見せてもらったのだが、八幡さんの「テレビ大好きっ娘魂」が炸裂している味わい深い作品であった。「このシーンを入れないとファンから抗議の電話が来ると思って・・・」「このシーンはお約束なのではずせなくて・・・」等、番組をきちんとしたストーリーで面白く仕上げる有能な編集者としての彼女と、昔からテレビにどっぷり浸かっていた宮崎アニメファンとしての彼女の葛藤が見て取れて、本当に心中を察する思いであった。でも、だからこそ彼女の作るスペシャルは面白いのだと思う。これから幾晩も徹夜を続けることになる八幡さん、ガンバレ。

 「千と千尋の神隠し」の魅力を過去作にルーツを求めて、解明していくこの番組、必見です。中でも、「赤胴鈴之助」にはファンが期待する宮崎テイストの全てがあります。宮崎監督に見せると、「そんなネタバレみたいな番組やめろ」って言うに違いない位、ヤバクて面白い番組に仕上がっているはずです。おまけに、宮崎監督初演出の幻のフィルム「ユキの太陽」も初公開!というオマケつき!!

本日のチェックポイント
 ・「“千と千尋の神隠し”の見どころスペシャル」 1月24日(金) 10:30-11:00放送
 ・「放送直前SP!“千と千尋の神隠し”を1000倍楽しむ方法」 1月24日(金) 20:00-20:30放送


1月20日(月)
 ここに来て、ようやくスタジオに活気が戻ってきたように思います。打ち合わせ場所のバーが満杯になることも珍しくなくなりました。制作部には先週からスタッフが戻ってきていますし、アフレコ作業も行なわれています(このお話は水曜日のネタでご紹介します)。スタジオジブリは昨夏からの一時帰休で制作部門がお休みしていたのですが、いよいよ2月からの制作再開を前にして、ウォーミングアップ開始といったところです。

 広報がお送りする日誌も今週が最後となりました。日本テレビでは連日、金曜“特別”ロードショーのお知らせが流れているようです。いよいよ「千と千尋の神隠し」のオンエアも今週となりました。というのに、今日は“オンエアへの道”をお休みして、誠に勝手なのですが、(ちょっと調子に乗って)広報からの皆さんへのお知らせとお願いを書いてみたいと思います。


「オリジナルの作品は受け取れません」


 ジブリに対して、自分で書いたオリジナル作品(小説、脚本、シノプス、絵コンテ等)を送っていただくことがあります。作品をアニメ化して欲しいとか、内容を見て批評して欲しいとか、目的は様々です。しかしジブリとしては、これらのご依頼については、申し訳ないのですが全てお断わりをしております。現在、ジブリの中には、これら送られてくる多くの企画を一つ一つ検討する人員がいません。よって、いただいた作品については、開封せずにそのままの状態で、ご返却させていただいております。


「スタジオの見学はできません」


 スタジオの見学の申し込みは、全てお断わりしています。ジブリのスタジオは特別な見学コースを作っているわけではないので、見学を受け入れてしまいますと、どうしても現場のスタッフの集中をそいでしまって作業に支障が出てしまいます。また、まだ発表できない作品もありますので、皆さんに自由に見ていただくわけには行かないのです。ジブリの制作現場をできるだけ再現したものに、ジブリ美術館の常設展示「映画の生まれる場所」がありますので、そちらをご覧になることをお勧めします。


「宮崎監督は講演の仕事は行なっていません」


 申し訳ないのですが、宮崎監督は講演の仕事は行なっておりません。確かに10年ほど前までは講演を行なっていましたが、あまりにご依頼が多いので、一部だけお受けしてそのほかをお断りするのも申し訳ないという理由で、講演活動はきっぱりと辞めてしまいました。申し訳ございませんが、ご理解をお願いいたします。

 以上、一方的に失礼なことも申し上げましたが、とりあえずみなさんのご理解とご協力をお願いいたします。


1月21日(火)
 今日は、朝から、“D-Project”(通称Dプロ)の本田さん(代表取締役社長!)がやってきている。今日から、アフレコ(明日の日誌で披露いたします)現場の取材を行なうのである。Dプロといえば、テレマンと並ぶ日テレの「ジブリもの」のスペシャリストであり、ここ数年、テレマンが海外取材や監督の密着型の特番(公開直前特番)を任されているのに対し、Dプロには興行や全国キャンペーンに密着した番組(満員御礼特番)を担当してもらっている。「浪花節」とか「涙」とかで視聴者の情感に訴える、いたって親しみやすい番組づくりを得意としているのである。「~の長い闇を抜けると・・・」というナレーションがあると、列車がトンネルを抜ける映像をイメージとしてインサートしたりする、わかりやすさが身上なのだ。

 実は本田さんは大変な気配りの人で、取材に来るときには手土産を忘れないし、宴会があるときは、きちんと差し入れを持ってきてくれたりする。カメラを回す時も、相手の顔色の変化を見逃さず、ちょっとでも不快な思いをさせたなと思うと、スッとカメラを引くような上手さを持っているので、取材の立会いをしても実にラクで安心なのである。
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写真は、ロケの打ち合わせをする本田さん。最近、めっきり頭に白いものが増えた。苦労がしのばれます。


1月22日(水)
 先週から、スタジオジブリでは、新装なったアフレコルームで、「キリクと魔女」(仏、ミシェル・オスロ監督作品)の日本語吹き替え版のアフレコ作業が行なわれている。日本語版の翻訳と演出を手がけるのは高畑勲監督。主人公のキリク役には、ジブリの他の作品にも出演したことがある天才子役が、魔女役には、ある大物女優がキャスティングされている。
(写真下、新装なったジブリコントロールルームでアフレコをチェックする高畑監督と鈴木プロデューサー)

 今日は、その女優さんのアフレコ日。朝からスタジオに緊張が走る。その女優さんは、現在連続ドラマに出演中で、アフレコにさける日程が、今日一日しかないのである。トラブルは避けたい。

 朝から、駐車場を確保したり、ロケ弁当をわざわざ都心から取り寄せたり、控え室の空調を整えたり、スタッフはソワソワ、ピリピリしている。そんなスタッフの気苦労を知ってかしらずか、ジブリに住み着いている半野良猫のウシコは、のんきに女優さんの乗ってきた高級外車の上でのんびり日向ぼっこなどしている。
「猫の恩返し」のムタのモデルになっただけある、大物のウシコなのであった。(写真上が、大物ウシコ)
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 「キリクと魔女」の詳しい情報は、今春の東京国際アニメフェア(3月19-22日、東京国際展示場)のスタジオジブリブースで大々的にお知らせする予定です。お楽しみに。


1月23日(木)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”その八
 いよいよ、金曜“特別”ロードショーの放映まで1日となった。スペシャル番組のオンエアも無事終わり、内藤剛志さんの「ザ!情報ツウ」の出演も本日無事終わったらしい(内藤さんは、明日も「おもいッきりテレビ」にも出演の予定)。

 明日の「ザ!情報ツウ」には、沢口靖子さんが出演予定。実は、「千と千尋の神隠し」の公開時、沢口さんは舞台で忙しく、まったくゲストとして登場していないし、インタビューも一回も受けていないので、明日の「ザ!情報ツウ」(日本テレビ系8:30-10:25)は要チェックなのである。「千と千尋の神隠し」フリークだけでなく、実はスタジオジブリのスタッフにとっても絶対に見逃せず、今から楽しみにしているのだ。

本日のチェックポイント
 ・「ザ!情報ツウ」 1月24日(金)8:30-10:25放送
 ・「おもいッきりテレビ」 1月24日(金)12:00-13:55放送


1月29日(水)
“「千と千尋の神隠し」オンエアへの道”最終回
 みなさん、金曜“特別”ロードショー「千と千尋の神隠し」を観て頂きまして、本当にありがとうございました!!

 本日から、スタジオジブリも無事再開。朝から、日本テレビの担当者がジブリに挨拶にやってくる。高視聴率(46.9パーセント)のお礼だという。ただ、鈴木さんは、所用でジブリに来ていないし、本部長代理の高橋Pも立ち寄りで出社していない。せっかく来てもらったのに、本当に申し訳ないと思う。なんだか盛り上がらない結末になってしまったが、これがいたって普通のスタジオジブリの日常なのである。

 金曜ロードショーの担当者は、「こんな視聴率ならば、紅白の裏番組でオンエアすれば良かった」とひらめいていたようだが、本物の紅白担当者が「あんなに苦労したのに、数字であっさり追いつかれるなんて・・・」とぼやいていたのを聞いていた広報担当者は、ちょっと苦笑を禁じ得ず。 ただ、広報担当者として今回の視聴率で嬉しかったのは、本編の数字もさることながら、事前にオンエアされたテレビマンユニオン制作の「“千と千尋の神隠し”を1000倍楽しむ方法」の視聴率が27.3パーセントに上ったこと!これまでのジブリスペシャルの中で最高の視聴率だったことはいうまでもなく、過去にテレビマンユニオンの制作してきた番組の中でも最高の視聴率となったらしい(未確認)。つまり、担当ディレクターの八幡さんには、「宮崎駿を撮らせたら右に出るものはない」の肩書きの他にもうひとつ、「テレマン史上、最高の視聴率を取った女」の肩書きも付与されることになった模様。八幡さん、おめでとう!これからも、よろしく。

 ところで、1月に入って広報がお送りしてきたジブリ日誌も、今回が最終回となります。3週間にわたるお付き合い、ありがとうございました。この下からは、本来の担当者による制作日誌が再開します・・・

 ・・・さて、2月1日から一時帰休だったスタッフもジブリに戻り「ハウル」の制作がスタートする予定です。今回から制作日誌も再開していきます。完成までお付き合いくださいませ。

 ようやく工事も終わって今日から仕事復帰。ネットワークの張替え余波か、棚とか床に壁の削りカスのようなものが結構見られる。掃除をしつつ良く見ると、私の電話が線につながっていない。周りを見ても私の内線番号が見当たらない。実は先週末に3階にいた野中、西村、長井の三人が人口密度均衡化のため2階へ移動。工事もあることだし、これを機に電話番号も整理する予定になっていたのだが、私の電話も整理されてしまったらしい。うーん。

 2月1日からの「ハウル」INに向け、倉庫にしまってあった動画机の搬入が始まる。しかしよく見てみるとかなり古くなった机も多い。中にはジブリ創設以来の机も存在する。電源関係が怪しくなったものから神村氏が解体をはじめる。こんなときに限って外は極寒。

 今までは1スタ一箇所だった作画部が今回は数箇所に分散されているため、禁煙喫煙の机配置等々解決しなければならない問題は山済みだ。とは言え、こうして机が並ぶとようやく仕事場らしくなってきた。


1月30日(木)
 メインスタッフルームを新設した二スタが殺風景だということで、宮崎監督が注文していた天狗のお面が完成し、届けられる。天狗のお面といってもただのお面ではない。下の写真を見てもらえば分かるが、縦横数メートルもある巨大なものなのだ。二スタ天井部分の三角形になった梁の真中に設置する。妙に建物と一体感がある。宮崎監督もご満悦だ。う~ん昔行った北温泉を思い起こさせる。
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1月31日(金)
 いよいよ明日から作画の人達が戻ってくる。机は搬入したが、電気配線やその他の備品がそろっていない。もっと前に準備していれば・・・、と思いつつも出来ないのが人間ってものでしょうか。ゴミ箱・ハンガー等を預けている倉庫まで慌てて車を走らせる。

 明日の作画始動に合わせて、「ハウル」のキャラ表が完成。大急ぎで大量コピー作業に入る。

 制作居村君が、どうやら娘さんの風邪をもらったようだ。インフルエンザでないのがせめてもの救いか。明日10時から作品説明会があるのに大丈夫だろうか?